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前回のあらすじ>






(殿下って、人気投票では俺より上の3位なんだよなぁ…。)

偶然にもガルデローベに入ることが出来たアリカちゃんは、
これぞチャンス!とばかりに学園長に入学を希望し、その入学を決定しました。(自分で勝手に)
その事に驚いた学園長は急遽各国の代表達で構成されるガルデローベ審議会を開き、
アリカちゃんの中途入学の件を取り上げます。
「入学した?入学したって何だ!?意味が分からんぞ!!」困惑する審議会の中、
新たにニナちゃんとマシロちゃんの勝手な仮契約の件が取り上げられ、議論はさらに混乱してゆきます。
そんな時、アルタイ公国の大公ナギが登場し、
「じゃあ二人を戦わせて勝った方だけをこの学園に居られるようにしよう!」と言い出します。
再び困惑する審議会、燃え上がる二人のやる気、忘れ去られる風華宮破壊の件!
そんな中、自分の上司でオマケに人気も上の人物の登場に戸惑いを隠せないセルゲイは、
ガルデローベの学食に『学園長女体盛定食M』というメニューがあることを知り、さらに頭を抱えるのであった…。











「「「ようこそいらっしゃいはげー!!」」」
「おいっ!今さり気なくハゲって言っただろ、オイッ!?」
「陛下、かなりハッキリと言っていたと思いますが?」
「チクショォォォ!!!」



「ほっほっほ。皆さんこんにちは。」
「…あっ…。」
「どうしました、アイン?」
「いえ、その…読唇術で気付いたのですが、
今、あそこに居る人が陛下の事を指してハゲと…」

「おのれヴィントの民草共ォォォ!!!」




マシロちゃんの即位式前日。
即位式に招待されたハゲを中心とした各国の来賓達が続々とヴィントの街に集まりつつありました。
加速度的に高齢化が進んで困っている日本のように、加速度的にヴィントのハゲ率が高まってゆきます。




「こ、これは!・・・何ていう果物だ?」



そんな中、街を散策していた仮面の国から招待された王子様が、初めて見た果物に興味を持ちました。
左のママさんがさりげに万引きをしていますが、
流石にスイカは大きく、すぐに見つかってしまいました。
常習犯なので、スイカでも行けると踏んだのでしょう。
しかしそれを見た王子様の熱い眼差しと真摯な説得に改心し、涙を流しながら素直に店主に謝ったので、
今回だけは無罪放免となりました。良かったねママさん、めでたしめでたし!





「めでたくないわ!」


「す、すいません…。」



明日の即位式で着る礼服の最終チェックをしていたマシロちゃん。
そんな着替え中のマシロちゃんが退屈だろうと思い、
退屈しのぎのためにと気を利かせて本を読んであげていたサコミズ君でしたが、
どうも話が気に食わなかったらしく怒られてしまいました。ポイント稼ぎは失敗です。




「見て下さいマシロ様ぁ〜!
コレ、何か白いバナナみたいですよ〜♪」




サコミズ君の所為で不機嫌になってしまったマシロちゃんのために、
今度は側近メイドのアオイさんがご機嫌取りに頑張ります。
即位式には多くの来賓が来る上に国の評判も掛かっているので、
万が一にも不機嫌な顔で行くなんて事は絶対に出来ません。
しかし、我侭なマシロちゃんの場合は不機嫌な顔でもそのまま行ってしまう可能性があるため、
マシロ姫の側近メイドとして、アオイさんも必死なのです。





「わらわの礼服がバナナでたまるか!!」


「す、すいません…。」



またしても怒られたサコミズ君。
(何故自分が…?)色々と憤る事はありますが、それを口にする訳にはいきません。
この辺が、好き放題言える上司と違って部下のツライところです。ただ耐えるしかありません。
しかしサコミズ君は他の人とは違っていました。
この事をキッカケにヴィントに対し反旗を翻したのです。





「戦闘甲板展開。全砲、砲門開けぇ!
各艦に伝達!各艦、各個に敵を迎え撃て!!」




秘密裏に作っていた航空戦艦よりもどっちつかずな戦闘空母に自ら乗り込み、
その他の戦艦や空母とともにヴィントブルームへと攻め込みます。
その勢いは凄まじく、ヴィントの軍備が元々不十分だった事と重なり、
その奇襲戦法で一気に郊外から街まで占領してしまいました。





「全軍突撃ーー!!!」



その後は自ら全軍を率いてヴィント城へと乗り込み、
マシロ姫を捕縛・投獄した後、数日後に公開処刑にしました。





「はっはっは!愚民共よ、その血その肉の全てを我に捧げるが良い!!」



そして自ら大覇王を名乗り、ヴィントの街で絶対的な恐怖政治を行い、
国民には城への参拝と供物を持って来ることを日課として義務付けます。
サボったり大した供物でなかった場合はもちろん死刑です。
そしてその力の象徴として新たに城を建設し、
その最上階にはドラクエWに出てくる大灯台並みの邪悪な炎を焚き、
未来永劫その灯が消える事はありませんでした。





「オイッ、サコミズ!お主先程から何をボーッとしておるのじゃ!
わらわの話を聞いておるのか!!?」



「す、すいません…。」



なんて妄想をしていたためまたしても怒られてしまったサコミズ君。
機嫌が悪い時のマシロ姫は手に負えません。
そして大抵はサコミズ君が怒られ役になります。




「この馬鹿者共がぁ!!」
「す、すみません…??」

(お〜怖っ!きっとまたマシロ姫に怒られたんだぜ?)
(あぁ、多分なwww)




仕方なく自分の部下で憂さを晴らすサコミズ君。




「ナギ大公の所為で事態が複雑化してきたぞ…。」



その頃の学園長。
ガルデローベの中でも前回の審議会で決まったアリカちゃんとニナちゃんの舞闘の噂が広まり、
そのことで生徒達が動揺するという事態が起こってしまっていました。
その事で最近ずっと考えごと続きだった学園長。
心配したぶぶ様が特別に処方した紅茶を差し入れます。
長葱の成分がタップリの葱茶です。




「シズル…これ何か変な臭いがしないか…?」


「そうどすか?う〜ん‥マンダム!」



出された紅茶から怪しい臭いがすると訴える学園長でしたが、
ぶぶ様は早く飲むようにと急かし、むしろ強引に飲ませようとしてきます。
その様子とおかしな言動に対し、
主に髪飾りからピンときた学園長はぶぶ様を問い詰めるのでした。





「…シズル。お前、私に何か隠してないか?」


「‥い、嫌やわぁナツキ。いきなり何ゆうてはりますのん?
うちがナツキに隠し事するやなんて、
そ、そないなことある訳ないやないの。」




ちょっとドモリながら答えるぶぶ様。
危うくカップを落としそうになるその様子に、学園長は更なる不安を覚えます。





(・・・・・絶対変だよなコレ。)


(媚薬を盛ったんがバレてしもたんやろか…?)


チラッ(何か目が据わってるしな…。)


「やっぱ飲むのや〜めた!」
(あぁ、そんなぁ…。)



結局飲むのを止めた学園長。
目が据わってる時のぶぶ様は大抵腹黒い事を考えているので、身の危険を感じたのでした。
デスクに組み敷こうとか考えていたぶぶ様はガッカリです。視聴者もガッカリ。




(…お父様と殿下のためにも…絶対に…!)



同じ頃、アリカちゃんとの舞闘を控えたニナちゃんは、
思い詰めた顔で、一人、ガルデローベ内を散歩していました。
コーラルNo.1のニナちゃんとローブを着用したことも無いド素人のアリカちゃん。
普通に考えれば考えるまでもなくニナちゃんの圧勝に終わるはずですが、
(最近の自分はついてない。変な奴には付きまとわれるし、スレイブには襲われるし、
反省房には入れられるし、延々と学園長の歌を聞かされるし、
今朝もタンスの角に足の薬指だけをぶつけたし。あっ、最後のはある意味運が良いかな?)

ついついそんなことを考えてしまいます。
万が一にも自分が負けるような事になれば、
父のセルゲイ、ナギ殿下、ひいてはアルタイそのものが各国の来賓の前で大恥を掻くことになってしまう。
それだけは避けねばならない。そんな想いから、知らず知らずに極度の緊張感がニナちゃんを襲います。
そんな時、ニナちゃんの父であるセルゲイが登場し、ニナちゃんに声を掛けるのでした。




「ニナ!」


「お父様!」


(ニナの居るこっちの方が1カメだから、次は…)


「ニナ、調子はどうだ?」
「あの…お父様?一体どこを見て…??」




登場したセルゲイですが、前回あんな事があったため、
早速ですが、落ち込むニナちゃんを励ますことに託けて人気の上昇を図ります。




←あんな事その一。(見下される)
←そのニ。(人気がより上位の男性キャラが登場)



しかし、気合を入れすぎた所為かカメラ目線になりすぎてしまい、
本当は優しい父親役で好感度がギュンギュンUPするはずだったのに、
返って人気に悪影響が出てしまいました。このシーンの放送直後、
テレ東に
「キモイ」「ウザイ」「ネクタイずれ過ぎ!」などの抗議の電話が殺到するという事態が発生し、
電話窓口は一時大パニックになりました。担当者の方々、ご苦労様でした。

しかし、まさか窓口でそんなことが起こっているとは露ほどにも思っていないセルゲイは、
視聴者に対して良い父親をアピールして人気獲得を図ります。





「ちゃんと寝てるか?御飯はしっかり食べてるか?下着は毎日替えてるか?
お父さんは全然臭くないしお前が大好きだから、
今度一緒にお風呂に入って身体でも洗ってやろう。」
「え?あ、はい。あの……えっ?」




良い父親をアピールしようと考えつく限りのことを言い繋げてゆくセルゲイですが、
頑張り過ぎて何がなんだか訳の分からないことを口走ってしまっています。





「・・・・・・。」




その所為か、ニナちゃんは余計に思い詰めた顔になってしまいました。
今は、主にセルゲイとの親子関係について思い詰めています。
(この年の親子が一緒にお風呂に入るのって、刑法には引っ掛からないのかしら?)
みたいな感じです。





「あんまり思い詰めるな・・。」



ニナちゃんが思い詰めた顔をしている理由の半分はセルゲイ自身なのですが、
本人はそれに気付いていないので、ニナちゃんを励まそうと必死です。
やればやるほど逆効果。まさにダメ人間の見本です。
ですが、そんなセルゲイでもニナちゃんの父親。
やはりここぞという時には心の拠り所になるため、
ニナちゃんは、ずっと思っていた事をセルゲイに相談します。





「・・・お父様・・・お父様、私・・・」



「あの子に・・勝って良いんですよね・・・?」




ニナちゃんが思い悩んでいた心の引っ掛かりは、蒼天の青玉を持つアリカちゃんの事でした。
(私だって絶対負けられない!でも‥本当に勝ってしまってもいいの?)
蒼天の青玉がレナさんの物で、14年前の事件中に紛失されたことは有名な事件であり、
当然ながらオトメの卵であるニナちゃんも知っていました。
そして、それを持って突然現れたアリカちゃんは…。
そんなニナちゃんの迷いと切実な想いを聞いたセルゲイは、
ニナちゃんを優しく抱きしめると、耳元でそっと囁くように言うのでした。





「お前の力は殿下のために、一撃必殺モンダミン!」
「分かりました。リラックスして頑張ります…!」




縋るようなニナちゃんの目に、ここでトドメだ!(視聴者に対して)と思ったセルゲイは、
いつ言おうかとずっと考えていた必殺の一言を開放します。
「良いんだよ。立派なオトメになるのがお前の夢なんだろ?なら、ベストを尽くして勝利を掴むんだ。
但し、本気を出したら一撃で倒しちゃうだろうし、一応即位式の余興でもあるからな、
まぁ、場を盛り上げるために軽く揉んでやるくらいのつもりで…。」

その言葉で緊張が解け、勇気付けられたニナちゃんは、
元気にその場を走り去ってゆくのでした。





「プリティで〜♪ キュアキュア〜♪ 二人は〜♪」
「「「プリッキュア〜♪」」」




即位式の前夜。既にお祭りムード一色のヴィントでは、
誰もが何かに取り憑かれたかの様に「ワッショイ!ワッショイ!」と呟き続けます。
ちなみに、
街中が金色に見えるのはライトアップや目の錯覚の所為などではなく、
ヴィント中のペンキ屋さんが調子に乗った結果です。
つなぎを着ててめちゃくちゃタフなので、失敗だってメじゃありません。
お祭り騒ぎのたびに金色です。




「・・・・・・。」



そんな中、セルゲイは一人、部屋に引き篭もってひたすら瞑想をしていました。
思い出されるのは一人の少女の顔です。













(アレは確かに蒼天の青玉だった・・・。)



周りには誰もいない上に自分の頭の中で考えていただけの事なのですが、
最後だけは胸を盗み見ていたことを、それっぽい事を言って誤魔化そうとします。
好きな女の子の淫らな姿を妄想し、学校で会った時に一人で気まずくなる思春期の男の子みたい感じです。

蒼天の青玉はペンダント型であり、アリカちゃんが首に掛けるとちょうど胸の位置に来るため、
貧乳派のセルゲイは、青玉を思い出すたびにアリカちゃんの胸が気になって仕方がないのです。
瞑想してるのに雑念だらけです。





(レナ…。)



そして頭に浮かぶ、もう一人の人物の名。









蒼天の青玉繋がりなのか、アリカちゃんの横顔に昔見たレナさんの横顔が重なります。
幼き日の自分。その視線の先には常に彼女が居た。
一人の女性を覗き見るためだけに城に不法侵入していた自分の姿は、
まさにストーカーそのものだっただろう。そういや何度も補導されたっけ…。
レナさんが結婚する事を知った日、相手の男を呪殺しようと思って何度も丑の刻参りをしたセルゲイは、
間違ってワラ人形ではなく自分の手に五寸釘を打ち込んでしまったため、
あまりの痛みに泣き叫んでいる所を、近くを通り掛かった人に救助して貰ったのでした。





(イカン、イカン。雑念は振り払わなければ!)



自分でもその事に気付いたセルゲイ。今度こそ本気で瞑想を開始します。




「・・・・・・。」



集中します。




「・・・・・・・・。」



さらに集中します。




「・・・・・・・・・・。」



もっとも〜っと、集中します!




「すいません、すいません!僕がキノコの国の王子です。……はにゃ?」



集中し過ぎた結果、何時の間にか眠ってしまっていたセルゲイ。子供かお前は!?
そんなキノコの国の王子様ですが、寝ぼけ眼のままでおもむろにペンを手に取ると、
机から紙を取り出し、手紙を書き始めました。
多分、ニナちゃんの確固たる勝利のための根回しか何かだと思われます。




「万が一とは思うが……一応、手は打っておくか。」


(拝啓、ヴィント中央テレビ局様…っと。
この間の「ガルデローベを行く」第143回放送を見ました。
これは個人的な意見ですが、セルゲイさんがとてもカッコイイと思いました。
男性としてのセルゲイさんも、父親としてのセルゲイさんも、
他のどの男性よりもずっと魅力のある素敵な方だと思います。最高です!
あの無邪気な少年のように輝く笑顔をたくさん見たいので、
セルゲイさんの出番をもっと増やすべきだと思います。
それが双方のためです。セルゲイさんサイコー!!\(^O^)/
<P.S.>
次回の人気投票では、セルゲイさんがダントツで1位になります。
もしならなかった場合、あくまで一つの可能性としての話ですが、
もしかするとテレビ局がある日突然、
何の前触れも無く爆発するかもしれないので、気を付けて下さいね☆)



「…よし、完成!」



と思ったら、自分の人気向上のための根回しだったセルゲイの手紙。
いい感じに書かれた脅迫状は、後日、不幸の手紙と間違われたため、
誰にも読まれること無く捨てられました。





「あーあ…。舞乙3話、リアルタイムで見たかったなぁ…。」
「そうだな…。」



皆がそれぞれの想いを胸に抱く中、夜はその深さを増してゆきます。
そしてマシロちゃんの即位式の日がやってきました。





「リンデンバウムへようこそ〜!」



次々にやって来る各国の王とそのマイスターオトメを出迎えるアカネちゃん。
オトメ候補生であるパールオトメの上位者はトリアスと呼ばれ、
今回の式典の手伝いをさせて貰えることになったのでした。
特にアカネちゃんに関しては前作で得たモノがあるため、
かなり以前から手伝いをさせて貰える事が決まっていました。
こーいうのを
昔取った杵柄と言います。




「ごーじゃす〜!」



授業参観において、家で見慣れてるはずの自分の親を見てはしゃぎ出す子供のように、
来賓達を見て大興奮のアリカちゃん。自分が知る少ない都会的ボキャブラリーの中から、
都会人が使いそうな言葉を選んでその様子を表現します。
デビューしたての人間が、無理して業界用語を使おうとするのと同じです。
大抵は、痛い空気が周囲に漂います。




「ふむ。流石はアカネだな…。」
(・・・・・。)




アカネちゃんを褒める学園長。その横のぶぶ様から若干の殺気が漂っていますが、
学園長が別の女性を褒めたことが面白くなくて、ちょっぴり不機嫌気味なのです。
恋する乙女はDO MY BEST。何時だって相手に自分の事だけを見ていて欲しいものなのです。





「へぇ〜、野次馬やってるなんて余裕だね!」



現れた早々嫌味を言うナギ。
折角この僕自らが君にチャンスをあげたっていうのに野次馬なんだ?へぇ〜‥凄いね!
取り敢えずチャンスは棒に振るつもりなんだ?スゴイスゴイ!流石は田舎者だ!ゆったり構えてるってことだね?
自分の国も北の辺境にあるため、都会で見つけた更なる田舎者に容赦がありません。
人間は、誰しも自分より下の人間を見下したいものなのです。
オタクが更なるキモオタを引き合いに出して自分のマトモさを主張するのと同じです。




「あっ、お褒めに預かり光栄です、殿下様。」



まったく嫌味の通じない手強い相手だったアリカちゃんに、
思わず苦い表情のナギ。
「う〜む、私もこんな技術を身に付けられたらなぁ…。」
いつもぶぶ様にからかわれている学園長も思わず感心してしまいます。





「――にしても、とんだ茶番だね、この即位式は。」



マシロちゃんには、かなり以前から一つの嫌疑が掛けられていました。
それは
「本物の姫かどうか」というものでした。
本物だと分かっているのなら、疑いをしっかり晴らしてからやればいい。
なのに、それがハッキリしない内に行われた今回の即位式を見て、ナギはせせら笑います。
これじゃあ、まるでマシロちゃんがガンガルだと認めてるみたいなものじゃないか、と。(ガンガルを検索





「はぅぅ〜、うっ、お綺麗です、マシロ様ぁ!」



そう言いながらもどこか笑いを堪えるのに必死な顔のアオイさん。
マシロちゃんが駄々をこねないかよりも、
アオイさんが式の最中噴き出さないかの方が心配です。





「アニメを流せ、アニメをー!」


「新たな王に祝福を!」



しかし、街中で一般人も見守る中、式は滞りなく進み、
遂にマシロちゃんが即位を果たしました。
勿論、TV局に骨が送りつけられるなんて事件も起こりませんでした。
そして始まる二人の舞闘。アリカちゃんも準備に入ります。





「準備はええどすか?」
「はい!」



ぶぶ様から視聴者に、
アリカちゃんを相手に、認証を与えるやり方とその説明が行われます(実演で)。





「宜しくお願いします!」
「エエ子やね。うち、ヨロシクしたげますわ!」



まず第一に、相手がお礼を言って下を向いてる隙にそっと手を伸ばします。
コレには相手に余計な緊張感を与えないようにするという意味があります。
あまりの早業に学園長もビックリ!
そしたら、その次に顔を無表情にします。コレには相手にコチラの次の行動を読ませず、
余計な事を考えて無駄な力が入らないようにとの配慮が含まれますので、
出来るだけ死んだ魚のような目で行って下さい。より効果が高まります。




「むぎゅむぎゅ〜!」
「はう!」



第二の手順まで終わったら、次はいよいよ相手に触れます。
腰と首の後ろに手を回し、相手に強めに
胸を押し付けます
こうする事で相手は視線の可動領域が限定されてしまうため、
知らず知らずの内に触れ合うコチラの身体の方に意識が向いてしまうのです。
そうなったら、もう成功したも同然です。あとは、





「大丈夫や‥うちが優しくしたげるさかいに。」



優しく声を掛けてあげれば…




「にゃあ〜ん!」



相手はアナタの術中となり、




「に゛ゃあぁぁぁん!!!」



見事、マテリアライズの完成です。
最後に出来るだけ蕩けるような甘いセリフを吐くと、
より効果的に相手を術中に嵌められます。





「暖房が効いた部屋のアイス!」
(・・・・??)



悪い例。




「始めぃ!」



そしていよいよ、大観衆が見守る中、
女王となったマシロちゃんの掛け声を合図に試合が始まりました。
このエンジェリックレイヤーにも登場したような感じのリングが、二人の戦う舞台となります。
エンジェルの微笑みを得られるのは果たしてどちらなのか!?





「さぁ〜て、どっちが勝つかねぇ?」
「普通ならニナちゃんだけど…」
「大穴狙い?」
「はんっ!大穴狙いで自爆しろ!」




勝負の行方に、トリアスの三人も興味津々。
どちらが勝つかに賭け始めました。





「私はニナちゃんかなぁ。」
「やっぱそうだよね〜♪」
「うんうん。それしかないって!」




コーラルの生徒達も、それぞれが配当を狙って賭け始めます。
ちなみに、今のところの倍率は、
ケイン・コスギと江頭2:50が素手で戦った時ぐらいの倍率になっています。





(…まっ、普通に考えてケイン・コスギの勝ちっしょ!)



三女、もといナオお姉さんも行く末を見守ります。




「私は断然、アリカに賭けるぞぉ〜!!」



そんな中、勇気を出して大穴に賭ける学園長。
学園長が賭けないと多分誰もアリカちゃんには賭けないので、
コレでこの賭けの成立が約束されました。





「セルゲイ…君ならどっちに賭ける?」
「言うまでもなくニナの方です。そう言う殿下はどちらの方に?」
「僕かい?う〜ん、どぉしよっかなぁ…。」




ニナちゃんの勝利を信じて疑わないセルゲイに対し、ちょっぴり迷い気味のナギ。
もしかしたら江頭並みのトリッキーな動きと予想外の行動で、
アリカちゃんが勝ってしまうかも知れません。
そんな中、ニナちゃんの親友のエルスちゃんは、





「私はニナちゃんに一万ペソ賭けるぞぉ〜!!」
「「な、なんだって〜!!?」」



と、舞闘をする当事者よりも盛り上がっています。
番組の撮影を無視して一人で盛り上がる松岡修三並みの暑さに、
隣りの二人も思わずお約束な反応をしてしまいました。
実際は
(ペソって何なの?)とか思ってます。




「俺はニナちゃんに賭けるぞ!」
「っていうかニナちゃん可愛いな!」
「ああ、可愛いな!」
「ニナちゃんは可愛い!」
「ニナちゃん最高!」
「無い乳最高!」
「スレンダー!」「貧乳万歳!」
「「「萌〜え!萌〜え!!萌〜え!!!萌〜えぇぇぇ!!!!」」」




街頭テレビで見守る一般人たちも、変な方向で大盛り上がりです。




「・・・っ!!」



開始の合図と同時に仕掛けるニナちゃん。
体勢を屈めると、無言で別の石柱に飛び移って攻撃を開始します。





「――ふっ!」



繰り出される高速の突き。
手に持った武器が如意棒の如く伸びてアリカちゃんを捕らえます。





「うわぁ!?」



躱されました…。
気を取り直して、もう一度攻撃です。




「――はっ!」



今度こそ、ニナちゃんの放った神速の突きがアリカちゃんの身体を捉えます。




「のわぁ!?」



また躱されました。(しかも変な顔とポーズで)
ニナちゃん…もしかして舞闘は苦手?





「・・・良い感じかしら?」



いいえ、そんな事はありませんでした。
ニナちゃんは、セルゲイに言われたことを忠実に実行していただけなのです。
それもそのはず。伊達にコーラルNo.1をやってる訳ではないので、
本気を出したら余興にならなくなってしまいます。
余興は楽しませてなんぼ。完璧に見える人が多少失敗した時の方が楽しいのです。
マギー審司の手品が成功するより、Mr.マリックの手品が失敗した時の方が面白いのと一緒です。





「ソエル!」


「――ぐっ!!?」


「モコナ!!」


「――くぅぅぅああっ!!」



そんな時、アリカちゃんが無意識に放った魔神剣がニナちゃんにヒット。
まさか飛び道具を持っているとは…。
予想外の攻撃に、ニナちゃんにも焦りの色が浮かびます。





(落ち着くのよ、ニナ…。私の勝利は揺るがない。
大丈夫…岡村隆、無問題よ!)




一時は銀魂みたいな驚愕のリアクションを取りそうになったニナちゃんでしたが、
気を取り直して精神を集中させてゆきます。
本気で狙ったように見せつつわざと外し、派手な感じで会場を盛り上げるのよ。
私なら出来るはず。出来るはず。出来るはず!





「死ねぇぇぇぇ!!!!」


「な、なんでぇ〜!?」





「ちょあ〜〜〜!!!」
「いやぁ〜!!」



攻撃はニナちゃんが勝手に外してたのに、何故自分が死ななければならなのか。
完全に理解不能な事態に混乱するアリカちゃんですが、
不条理を不条理で塗り潰してゆくのが、この世の理なのです。
そこに道徳的な理解を求めてはいけないのです。
ふかわりょうも、素人である両親とセットの方がウケるという不条理に耐えているのです。





「おおっ!!なんて見事な…。」



息もつかせぬ凄まじい攻防に、
思わず立ち上がって見惚れるマシロちゃん。
夢中になりすぎて開いた口も塞がりません。





「・・・・・・。」



皆が二人の舞闘に夢中になっている頃、
舞闘会場から少し離れた位置にある修理中のヴィントブルーム城に、
一人の侵入者が現れました。
べつに迷子になった人とかではありません。





カシャン!


顔を覆っていたフードを除けると、その目に緑色の光が宿ります。
友達に夜光塗料でイタズラされたとかではなさそうです。





ピッ…ピピッ…
ウィーン、ウィーン…。




その目に映し出されたのはマシロちゃんの玉座。
まるでスカウターのような画像で周囲の様子を捉えます。
玩具にしたら売れそうですね。僕も小学生の頃は自前のスカウターで遊んでいました。
ちなみに、相手の戦闘力が僕を超えた事はありません。




「・・・・・。」


「そこまでどす!」


「――っ!?」



そんな彼に突如として背後から掛かる声。
これはいい椅子だ…。なんて思っていた椅子マニアの彼も、驚いて振り返ります。




「アンタも・・・
あの黒い手紙に踊らされたはる、
可哀想な人達どすか?」


「・・・シュバルツ共などと一緒にしないで貰おう!」



第一話でマシロちゃんを襲ったおいちゃんの仲間か?と問うぶぶ様に対し、
あんなおっさんと一緒にするな。と答える彼。
ゲームヲタクが「アニヲタキモイ!」と言うのに似ています。
どっちもキモイ。




「せやかて、その怪しさは」


「怪しくなどない。」



誰もが抱く最もな疑問をコンマ数秒で否定する彼。
こーいうのは、自分でその事を自覚し、
且つ、相手の思考を予測していないと出来ない芸当です。





「・・・・・・。」


「・・・・・・。」



ちょっと半笑い気味のぶぶ様。
どう見ても可笑しい人が可笑しくないと言った時ほど、可笑しいものはありません。





(――キュピーン!)



そんな時、ぶぶ様の脳内に一つの豆電球が浮かびました。
言うまでも無いですが、相手を引っ掛ける作戦のことです。





「そないなこと言うたかて、
どっから見ても怪しすぎますえ?」



「怪しくなどない。」


「せやけどなぁ…」


「怪しくなどない!」


「声も関俊彦さんやし…」


「怪しくなどない!」


「…怪し過ぎどす!」


「怪しくなどない!」


「怪しい!」


「怪しくない!」


「怪しい!」


「怪しくない!」


「怪しい!」


「怪しくない!」


「ほなら、その怪しくない御方はどなたどす?」


「黒き谷よりの使いだ。」


「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・。」



作戦成功。
うっかり黒き谷よりの使いだと言ってしまった彼の名は、サイボーグ戦士ラド。
通称「メカ上」
特に名乗らなかったけど、
EDのキャスト欄で名前がバレてしまったといううっかりさんです。
玉座の間に忍び込んだ事から、恐らく狙いはマシロちゃんの命であったと思われますが、
折角忍び込んだのにマシロちゃんは舞闘会場に居るといううっかりぶり。
殺された兵士達もいい迷惑です。





「かなんわぁ。無粋なうっかりさんには、
ぶぶ漬けでもご馳走しましょうか?」



「粋な計らいだな、一杯頂いておこうか。」



そして斬って落とされる戦いの火蓋。
うっかりが原因で始まるというのもなんですが、とにかく、
外の試合とは違った「死合い」、本当の殺し合いです。





「…マテリアライズ。」



殺ル気になったぶぶ様は、目の下に影を作りつつ薄笑いを浮かべ、
そっと髪を掻き揚げながら一言呟きます。





…ピピッ、ピピッ!



すると、それに反応して機械的な音を上げる紫色の宝石『嬌嫣の紫水晶』
この世に一つしかない宝石からその名の通りの妖艶な輝きが放たれ、
周囲がオカマバーとかに似合いそうな怪しげな光に包み込まれてゆきます。




「な、なんだこのムーディーな光は!?」



今にもオカマが踊り出て来そうな雰囲気に、メカ上もちょっと狼狽気味です。




「ダイアナさんでいきますえ?」



続くマテリアライズ。
今度はミラーボールでも出てくるのかと思いましたが生憎と品切れ。
その代りに、ぶぶ様の
まるで汚物でも見るような心底侮蔑した目を拝むことが出来ました。
この瞬間で、瞬間最高視聴Mが23.6%を超えたというデータもあります。
ちなみに、Mは蔑まれたいの略です。





「それともジュリアさんの方がええんかなぁ…。」


その後、前作を思い起こさせるかのように開かれる両の瞳孔。
見る者を蛇に睨まれた蛙状態にしていきます。
銀魂の土方さんもビックリの開きっぷりに、メカ上も言葉がありません。





(イカン、少し目が合った…。)



できれば避けたいところです。




「・・・・・。」


そんなぶぶ様の背後に突如として浮かび上がる影。視聴者もテレビ画面に噛り付きます。
普通なら、視聴者もココで「影も瞳孔が開いてるよwww」とか突っ込むの所なのですが、
この時ばかりは違っていました。皆一様に携帯を手に取ると、
そのまま揃ってサンライズに抗議の電話を掛け始めたのです。
「作画陣!腕の角度の修正甘いぞ、何やってんのぉ!!」
髪の靡き方もよく分かりません。(他のコマでは右方向にも風が吹いてるのに…)




「・・・・・。」


視聴者が画面を上から見たり下から見たりしてる間もマテリアライズは続き、
スペシウム光線とチョークスリーパーで素敵SA・TU・GA・I予告をすると、
ようやくぶぶ様のマテリアライズも終わりを告げました。





「待たせてしもうたね。」



お約束を守ってくれた律儀な相手にお礼を述べるぶぶ様。
ならばコチラもそろそろ…。そう呟くと、




「我が一撃は無敵なり!」



背中に指していたダブルランスを構え、ラドはぶぶ様に突撃してゆきます。
「一刀の下に葬ってくれる!」




「――くっ!?」



一刀の元に葬られそうになるラド。
ぶぶ様の武器がガリアンソードみたく伸縮自在で遠近両用だった事を知らなかったため、
あと一歩で角が取れそうになりました。
角が取れたら格好良さが失われるため、ラドも必死なのです。
角は昔から強さの象徴であり、貴族の証なのです。





「――はっ!」



しかしそんなのはぶぶ様には関係の無いこと。
床を這い回るゴキブリを叩き潰すが如く、
再度、ラドへ向けて空中からの遠距離攻撃を繰り出します。




「ちょえ〜〜!」



迎え撃つラド。




「はぁ!」



さすがに伊達や酔狂で単身城に乗り込んできた訳ではなかったので、
この程度の攻撃なら防ぐのは朝飯前です。さっきのは不意を突かれただけです。
人気No.1だからっていつでもカッコ良く行けると思うな!





「くっ!?」



今の攻防でラドの実力を見抜いたぶぶ様。
一筋縄では行かなさそうな相手を前に、思わず顔をしかめます。
なんやのこの人、面白い動きしはるくせに…!





「せやったら、これでどうやの!」



ちょっとムッとしたぶぶ様。
握る得物に力を込め、必殺の構えで再びラドとの戦闘を再開します。

一方その頃、
アリカちゃんとニナちゃんの舞闘も、その激しさをさらに増していました。





「てやぁーー!」


「フンッ!」


「…ん…ぐっ……。」



最初こそ見事な攻防を披露していたアリカちゃんでしたが、それは所詮作られたもの。
ニナちゃんの書いたシナリオの上で踊らされているだけでした。
石柱から降りて地面で戦う様になってからはそれも無くなり、一方的にやられ始めます。





――ガッ!


「はぁぁぁ!!」



しかしながら、憧れのオトメになるため、憧れのぶぶ様とお近づきになるため、
そしてなによりお母さんの情報を得るそのために、何があっても負ける訳にはいかないアリカちゃん。
何とかやり返そうと、倒れた自分に不用意に近づいてきたニナちゃんの髪を掴み、
そのまま頭突きで反撃します。





「バスターコレダー!!!」


バチッ、バチチッ…!
「ぐぁ……っ!!?」



っが、所詮は素人の繰り出す感情任せの攻撃。
訓練を積んだニナちゃんには通じる訳も無く、
逆にニナちゃんのバスターコレダーを喰らってしまいます。





「超電磁竜巻〜!」


ギュルギュル!「超電磁スピ〜ン!」


「痛ったぁ〜…。」



そして決まる超電磁竜巻とトドメの超電磁スピン。
電磁の力で相手を拘束し身動きできなくさせ、
その隙に必殺の回転力で敵を打ち抜くという大技です。
ローブを纏っていたから何とか生きていられたアリカちゃんですが、
その下の砕けた地面がその威力の凄さを物語ります。

生身なら確実にピッコロ大魔王でした。





「あの子…ヲタクじゃん!」



闘いを見守っていたナオお姉さんも心配します。




「フ、フフ…アリカが勝ってくれるのなら、
この程度の出費は痛く…痛くない…よな…。」




学園長も心配します(修理費的な意味で)。




「ほぅ…なかなかどうして、やるな!」



一方のコチラ。
ラドが、押されてたにもかかわらず上の立場から相手のことを褒め出します。
一見するとただの負け惜しみのようにも聞こえますが、
相手をムカつかせて判断力を鈍らせようというのがホントの目的です。





「おおきに!」


「ぐぉ!?」


「おのれぇぇぇ!自分ばっかり空から攻撃して…
卑怯だぞコノヤロォォォ!!」




どこまでも冷静なぶぶ様に、逆に自分がムカついてしまっているラド。
武器を振り上げ、その場で地団駄を踏みながら猛抗議します。
貴様も地面に降りてきて対等に戦えー!





「しょうがあらへんなぁ…。」



仕方なく駄々っ子の言う事を聞いて地面に降りるぶぶ様。
何故か全国のファンが思わず抱かれたいと思ってしまうような男前な顔をしています。
間違いなく、明日には宝塚から電話が掛かってくることでしょう。





「クックック…。」



そんなぶぶ様を見て、何故か笑い出す悪い顔のラド。
俺の方がカッコイイ!とか、高らかに言うつもりなのでしょうか?




「チャ〜ンス!」


「これでも喰らえ〜!!」



と思ったら、そのまま相手に剛・魔神剣で奇襲を仕掛けるラド。
殺すか殺されないかの戦いの中で自分の言う事を聞いてくれたぶぶ様相手にこの仕打ち。
クックック…騙される方が馬鹿なのだ!
流石、
サイボーグなのに悪い表情を出来ただけの事はあって、
バカボンのパパ風なのに説得力があります。





ヒョイ!



でも攻撃はアッサリと躱されます。




「・・・・・・。」



あまりのアッサリ加減に言葉もないラド。
まるで塩抜きの味噌汁を飲んだ時のような顔になっています。





(だがまだ大丈夫だ。幸い奴はまだ地面に降りている。)



挫けないラド。
一発目は外された。だがそれなら二発目を打てばいいだけの事。
それが外れたら三発目。それもダメなら四発目。要は当たるまで打つだけのこと!
数打ちゃ当たる、数打ちゃ当たる、下手な鉄砲数打ちゃ当たる!
早漏は数で勝負って梅澤春人先生も言ってた気がするし!関係ないけど…。





「ワイは黒い谷のウージーや〜!」


ヒョイ!


「これがワイのリミットブレイクじゃ〜!」


ヒョイ!


「必殺!百九式波動球〜!」


ヒョイ!


「おのれぇぇぇぇぇぇ!!!」



どうしても当たらない攻撃。玉座の間の破損箇所だけが増えてゆきます。




(イカンな…これではラチがあかん。)



ようやく焦りだしたラド。
一人で城に潜入している以上、任務は(出来るだけ)穏便かつ短く終えたいところですが、
マシロちゃんが居ない所に入り込んだ挙句、ぶぶ様にも見つかっているのでそれは不可能な話。
ですが、それでも出来れば長居はしたくありません。





(…ふむ、アレで行くか!)



必死で考えた末、ようやくこの窮地を脱する方法を思いつきました。
その方法は、まずぶぶ様にコチラが弱っているように見せて油断させ、
次に…





「・・・・・。」


「あっ、ムリだこれ…。」



自らの死期を悟ったラド。作戦が通用しない事を悟り、強行突破に出ます。




「くっ、これだけはやりたくなかったが仕方あるま…」


「あんさんとの戦いも、もうこの辺で終わりどす。」


「はぁ!」


「ぐっ!」


「…はぁ…はぁ……。」



しかし強行突破に出る間もなく、
セリフ途中に攻撃されて壁際まで追い詰められます。死ぬって!





「うちは、早く戻ってナツキとラブラブしたいんどす!」



しかし、そんなラドに対しぶぶ様は死の宣告。
眼つきからも分かるように、こうなったら如何なる相手にも容赦はありません。
視聴者や製作側も後押しするので手に負えず、ラドの頭上に
の文字が浮かび上がりました。
皆、二人のラブラブが見たいのです。





「ナツキは誰にも渡さへん!」


「何の話だ!?」


ガギィン!


「――何っ!?」



襲い来る何度目かの攻撃を弾き、今の内に何とかして脱出を!と思っていたラドに、
それを先読みしたぶぶ様の変幻自在の一撃が、再度その牙を剥いて襲い掛かります。





「だが、この程度で俺を倒せると思うな!
このまま貴様に弾き返してくれる!
必殺、バスターホームラn」



「くっ、メジャー級の速度だったか!?
間に合わん、ここはバントで…」



「な〜んてな!やっぱりバスターで…」


「クソッ、やはり無理か!」


ガァァン!


バキィィィン!!


ガガガ・・・「うおぉぉぉ・・・」


ズガガガ・・・「おおおぉぉぉぉ・・・」


ゴリゴリゴリ・・・ドン!「ぉぉぉぉおおおお!!!?」



ズガ〜ン!!!「ぬお〜〜〜〜〜!!!!!」


「なんだ!?」「え…?」「何事じゃ!?」
「なに!?」「なんですの?」「あれは…!」
「おや?」「アレは一体…。」
「一体何事だ!…って、俺だけ全く映ってねぇし!」




ぶぶ様の攻撃を防ぎきれず吹き飛ばされたラドが城壁を貫通。
その所為で、第一話以降ずっと城にもたれ掛かっていた飛行機を支えるロープが切れ、
飛行機が大観衆と来賓の真上に落下してきてしまいました。






ゴゴゴゴゴゴ・・・



とある漫画のような効果音で崩れだす城壁と倒れる飛行機。
しかし学園長はマシロちゃんを、ニナちゃんはセルゲイの命令でナギを守りに行って手一杯。
他の生徒達も認証がなければローブを着用できず、生身でこれを支えるのは不可能。
倒れる飛行機の下にいる大観衆を救う術は何もなく、ただそこに待つのは彼等の死。
しかしそんな状況の中、たった一人、逃げる皆と反対方向に歩き出す少女がいました。





「助けなきゃ…みんな、皆アタシが助けなきゃ!!」



その少女はアリカちゃんでした。
ニナちゃんとの舞闘でボロボロに傷付いた身体を引き摺りながら、
たった一人、巨大な鉄の塊に向かって走り出すのでした。






次回へ続く。










<伝説の没カットシーン>




「まったく…殿下の気紛れの所為でこっちは大わらわだ!」


「・・・あ、やべっ、このカメラまだ回ってんの!?」