「お姉さま。何やら、
管理人さんがこの後でネタレビューをするらしいですよ?」



「あら、そうなの?
ちょっと見てみたい気もするわね。」



「けど、ここの管理人は気紛れで色々やるから、
気を付けた方が良いんじゃないかな。」



「えっ、そうなの?」


「確かに…私の次のコマに、いきなり、
女性の胸がドアップになったコマを持ってきていますし…。」




という訳で、胸のドアップでこんにちは!
マリみてのレビューだと勘違いした人はゴメンナサイ。
上のコマだと何のレビューだかサッパリだと思いますが、
「京四郎と永遠の空」のレビューです。分かった人が居たら変態ですね。

祐巳さんが言った通り、この下に続くのは、
投げやりな管理人が息抜きと気分転換を兼ねて作ったネタレビューです。
力不足なことに上記の理由も加わるため、かなり適当です。
何処かで見たことあるって方が居るかも知れませんが、
た、たた、多分、気の所為です(挙動不審)。
見ても良い事は無いので見なくてもいいですが、見る人は原作を見てると良いと思います。
出来も本家には遠く及ばないので、知ってる方は期待して見ると損をした気持ちになります。
それでも良いって方のみ下からどーぞ。









それは、遠い遠い遥かな記憶…。
夢の中の…大切な記憶…。
昔々女の子は、王子様と出会ったのでした……。






どことなく「少女革命ウテナ」を思い出させるようなシーンから始まります。
花が咲き乱れ、舞う花弁が辺りを包む幻想的な光景の中、
どこかで聴いたような声と音楽が流れます。



「あなたはだ〜れ?」


そう呟いた彼女がこの作品の主人公なのでしょうか?
もしそうなら、小さい男の子から大きい男の子まで、
メロメロにノックアウトされることは間違いないでしょう。



「行こう、一緒に!」


既にメロメロだったお兄さん。
視聴者が見守る中、いきなり幼女を連れ去ろうとします。
可愛いモノを見ると周りが見えなくなるタイプのようです。



「飴ちゃんをあげるよ。」
「本当?」


そして連れ去られる幼女。
最近の子が飴玉一つで言う事を聞くかどうかは怪しいですが、
純粋無垢な少女は釣られてしまいました。
固く手を取り合う二人。
これから幼女とロリコンお兄さんの愛の逃避行が始まります。



「さてはお主、ラストダンスのことを考えておったのか?」


と思ったら違いました。
さっきまでのは、どうも主人公が見ていた白昼夢だったらしいです。
次の瞬間には、髪も黒髪になり、
何となくスポーツ系な感じに育った主人公の「こずえ」ちゃんが登場しました。
その証拠に頭にゴーグルを乗っけています。多分、水泳部かなにかでしょう。
ゴーグル愛好会とかではなさそうです。



「なにボーッとしてんの、空?」
「んぅ?あっ、ご、ごめん。」


と思ったら、早とちりでした。
左側の少女が、今度こそ本物の主人公「白鳥 空(クウ)」ちゃんです。
ラストダンスの事を考えてボーッとしていた空ちゃん。
こずえちゃんによって現実世界に引き戻されたかと思いきや、
意識は未だ精神世界を彷徨っていそうな表情です。若干、眼が虚ろ。



「お嬢ちゃん、良い匂いがするのぉ〜!」
「いやぁ〜ん!」


周囲の耳を気にせず、ラストダンスの話題で盛り上がる二人。
ラストダンスとは、もうすぐ始まる大学園祭のラストを飾る大ダンスパーティのことで、
好きな人にカードを差出し、見事受け取って貰えたら一緒にマイムマイムを踊れるという、
モテない男子にはトラウマを残しそうな感じの、少々酷なイベントのことです。
「一緒に踊れた二人は永遠に結ばれる」という逸話があるためか、
毎年この季節になると催眠術を練習する子が増え、
学校の先生は催眠術を止めさせるのに苦労する事になります。
ほら、よく見れば二人の周りにも被害者がちらほら…。



「――あっ!」

と、突然前方を向いて赤くなる空ちゃん。
その視線を追うと、一人の男子生徒がバスに乗り込んできました。



「・・・・・。」


学校に向かっているのに本一つしか持っていない彼は、
空ちゃんが密かに憧れている先輩でした。
全身から漂う作られた感たっぷりのナヨナヨ感が女性の母性をくすぐるため、
一部ではそれなりの人気を誇っています。



「・・・・・・。」


本のタイトルからも分かる通り、とても儚げな雰囲気を持った少年なのです。
これで中身が官能小説とかだったら嫌ですね。そのままでも嫌だけど。
そんな先輩を見つめるだけで何も行動を起こさない空ちゃんに、
こずえちゃんが「告白しておいでよ。先輩も初恋に憧れてる今がチャンスだよ!」
と、発破を掛けます。



「あぁ…。」


親友に勢いを付けてもらったけど、
それでも中々踏み出すことの出来ない引っ込み思案な性格の空ちゃん。
常に携帯していたラブレターを見つめて溜息をついてしまいます。



常時内ポケットに用意されていたラブレター



「ねぇ、空。行きなよ。
空、天が行けと言ってるぞ!?渡せ渡せ!」

「う、うん…でも…」


急かすこずえちゃんを他所に、やるなら絶対失敗したくない空ちゃん。
頭の中で入念なシミュレーションを繰り返します。



(…左手は添えるだけ…左手は添えるだけ…)

(よぉーし、完璧!)

「こずえちゃん…私、行くよ!」
「おし!行ってこーい!」


ようやく決心した空ちゃん。勇気を振り絞って一歩を踏み出します。
やらずに後悔するよりやって後悔した方が良いもんね!いや、後悔したく無いんだけどさ…。



「あ、あの、先輩…私、コレ…」

「ありがとう!」

「ほ、本当ですか!?」「嘘なんて付かないよ。」

(…あれ?私まだ何も言って無いのに…。)

「君、可愛いね。僕の初恋だよ。」
「そんな…先輩…。」

「・・・・・・・・。」


固まる空ちゃん。
せっかく勇気を出したのに、待っていたのは残酷な現実だけでした。
そんな空ちゃんにこずえちゃんが声を掛けますが、



「あ、あは…あはは……。」


と、ひたすら乾いた笑いを繰り返すだけでした。
挑戦する前に失敗した時、人はこんな顔で笑います。



(拝啓、私の(心の中の)王子様。若草が萌え、風薫る五月となりました…。
もうすぐGW。そして大学園祭ですね。私は…まぁ、ボチボチ元気です…。
別にフラれたんじゃありません。だってまだ告白してなかったし!)



告白する前にフラれたのが相当ショックだったのか、
ついにはお空に向けてそっと語りだす空ちゃん。
あまりの痛々しさに見ていられません。
滑ったギャグを無理やりウケさせようと頑張る芸人よりも痛々しいです。





ここが空ちゃんやこずえちゃんが通う学園です。
「アカン!でか過ぎて、皆あわあわ言うとるで!」が略されて…
いえ、何でもありません。すいませんでした…。
その名の通り、多数の学校が寄り集まって都市の如くなった、巨大学園都市です。
年に数人の潜伏していた指名手配犯が見つかることでも有名です。
そして、何処かで見掛けたことのある方々が登場したOPを向かえ、
物語が始まります。


←↑何処かで見掛けたことのある方々。



「ひゅ〜どろどろ〜!オバケだぞ〜!悪い子はいねが〜!」
「こずえちゃん、それナマハゲだよ?」


二人が通う学園では、今、とある怪談じみた謎の誘拐事件が噂となっていました。
吉谷先輩、C組の加藤さんに続き、昨日、ついに三人目の行方不明者が出てしまいました。
どうせなら気持ち悪い目で見てくる隣の席の山田君も消えてくれればいいのに…。
そんなこずえちゃんの願いも空しく、今回消えたのはE組の高木さんでした。



「でねでね?マリちゃんが友達から聞いた話なんだけど…」


マリちゃんの友達が言うには、最近、
黄昏時の校舎でマントを羽織った見慣れない女の子がウロついてるのを見かけた、とのこと。
その情報から、頭をフル回転させたこずえちゃんは、
とある一つの結論を導き出します。



「その子が犯人だわさ!間違いない!」


誰も思いつかなかった解答に空ちゃんもビックリ。思わず、
そうかぁ、いつもみたく二、三日連絡がつかないだけかと思ってたよぉ…。
と、自分の浅はかな考えを漏らしてしまいます。
やっぱり迷子になる人はいるみたいです。



「いや、それは恐らく霊の仕業でしょう。」


心霊サイキック部部長、渋谷さんからの貴重なご意見でした。



「機動風紀が来てくれないかなぁ。」


事件を解決するために、機動風紀に来てほしいと願うこずえちゃん。
機動風紀とは、アカデミアの全学園を管理・運営する中央統合生徒会の、
勅命を受けた生徒達で結成される組織の名前。
学園の治安に対するあらゆる権限を持った組織で、
文武両道かつ美形であることが組織に入る者の条件なんだそうです。
まぁ、極上生徒会の遊撃みたいなものだと思って下さい。



「えー‥このようにして、
私と妻は無事初夜を迎えたのであります。」



しかし、そんな美形だらけのお偉いさん達が、
しかもその中でも段違いの美形5人で構成される7番隊の方達が、
胡散臭い事件のためにわざわざやって来ることも無く、
二人は普通にいつもの授業を受けるだけなのでした。



ガラガラ…!


何か来た。



「な、何だ君達は!?」


突然現れた異様な格好の集団に、先生もかなり引き気味です。
「な、何て恥ずかしい制服を着た連中なんだ!」



「授業中、突然カッコ良くてすいません。
機動風紀7番隊隊長、大神ジンです。
カッコイイことは罪ですか?」


「わ、私を犯罪者扱いするのか!?」

「なに‥、あの人達カッコイイ〜!」「素敵〜!」

「萌え萌え〜!」「抱いて下さ〜い!」
「そこの教師邪魔!消えろ!!」

「じ、ジン様ぁ〜〜〜!!?」


気合入れ過ぎてかえって恥ずかしくなったような制服で登場したのは、
ちょっと前に二人が噂していた機動風紀7番隊の面々。
極上の美を持った憧れのメンバーの登場に、教室は(女子を中心に)パニック状態。
そんな生徒達はさておき、
すいませんと言いつつあまり謝ってる風には見えない彼らの物言いに、先生は大激怒。
お前達、寄って集って私を犯罪者にしたいのか!?
美しさは罪だ。格好良さも罪だ。だが、私という存在だけは罪にならんのだ!
何故なら、究極の美を持つ私こそがこの世の真理なのだk



「・・・・・・・・。」

「あっ、すいません。少し調子コキすぎました…。」


登場と同時にキラキラボンバーを炸裂させた機動風紀7番隊の彼等。
わざわざやって来て教室をパニックに陥れ、
そのまま何もせずに帰るただの嫌がらせ集団なのかと思いきや、
突然、転校生を紹介すると言い出します。
それならわざわざ君達が来る意味なくね?と思う先生を他所に、
大神君の合図とともに転校生が教室に入ってきます。


じゃん!

じゃん!!

じゃん!!!

じゃ〜ん!!!

「片翼の天使、綾小路京四郎です。」


当たり前のようにキラキラボンバーを炸裂させるその姿に、
開いた口が塞がらない先生。
こいつら、どこまで私の授業を妨害すれば気が済むんだ!?
この教室が授業中だという事を覚えている者は、先生以外、
視聴者を含め、もう誰一人としていないでしょう。



「見てみて、空!ほらあの制服!
廃校になったはずの幻の学び舎、城塔学園の生徒だよ!
一体だれ様なのかな?いやぁ〜ん、素敵〜!!」



そんな、タイトルと同じ名を持つ新たな美形人物の登場に、
さっきからトキメキモードだったこずえちゃんも、さらにヒートアップ。
あからさまな説明ゼリフを、極々自然に視聴者の脳内にインプットさせてゆきます。
しかし、空ちゃんの興奮度はそれをさらに上回るものでした。
話し掛けるこずえちゃんの言葉も右から左へ流れ、
その目の奥、脳の中に、綺麗なお花畑が咲き乱れます。



咲き乱れたお花畑。見つめ合う二人。



「…レッツ、ラブロマン。」

「私は」

「アナタを」

「愛しています。」

「世界中の、誰よりも!」

「そんな私は…」

「そんな私は…?」

「恋の暴走特急ゴーゴゴー!」

「…君とだったら何処までも。」


止まらない妄想。
自分の頭の中の王子様と勝手に重ね合わせ、



「あは〜!」「あは〜!」


上のコマからも分かるように、空ちゃんのみならずこずえちゃんも、
完全に意識が別の世界へと旅立ってしまったのでした。



「あぁ、京四郎様…。私、招待状を渡す相手決めたわ!」
「あぁ〜!ズルーイ!!」
「そうよ、私だって決めたんだからぁ!」


お昼時…。皆の話題は綾小路京四郎一色でした。
京四郎様…素敵…。京四郎様とラストダンスを踊れたら…あぁ…。
誰もが彼の事を思い浮かべ、名を呼び、頬を上気させ、
そして大神ジン君と機動風紀7番隊の面々のことを忘れるのでした。
そんな中、突如として中庭から聞こえてくるバイオリンの音色。
不思議に思った面々が中庭に向かうと、
そこでは京四郎様が優雅に曲を奏でていました。



ダ、ダ、ダ、ダァ〜ン♪


美しい旋律は、集まった人々(主に女子)の心を感動に震えさせます。
京四郎様ステキ〜!なんて素晴らしい演奏テクなのぉ〜!あの愁いを帯びた表情が堪らないわ〜!
基本的に音楽はどうでもいい彼女達ですが、とりあえず感動します。
そしてまた、何処までも澄んだその音色は、
中庭から学園へと深く深く響き渡って行くのでした。
何でわざわざ中庭でバイオリン?とか、そーいう事は考えてはいけません。



「わー!わー!」「わー!わー!」


この音色の発生源が京四郎様だと知った女子達は、
何処からともなく現れ、残像を残しながら中庭へと駆けつけるのでした。
京四郎様に恋する彼女達は、京四郎様を想うと体温が異常に上昇するため、
その熱により表面の塗装(化粧)が溶けてしまい、
それが質量を伴った残像としてその場に残るのです。

ちなみにこれは、その残像で相手を撹乱させ、
自分一人が抜け駆けしようとする時によく使われる古典的な戦法です。
恋のライバルが居る女性の皆さんは、是非使ってみて下さい。



「・・・・・・。」


と、皆が見つめる中、突如として演奏を止める京四郎様。
その昔、卓球の愛ちゃんが、カメラの前で自分が失敗を繰り返したのを、
周囲の観客がうるさい所為だと言って怒った事がありましたが、
京四郎様も周りの雑音が五月蝿くて怒ってしまったのでしょうか?
無言で観客を睨みつけます。



「えっ…わ、私の所為?」


追われる視線。そして注がれる視線。
その先には主人公である空ちゃんが立っていました。
「わ、私が怒らせちゃったの!?そ、そりゃ、確かに頭の中では、
あんな事とか、こんな事とか、あまつさえそぉ〜んな事とかもさせちゃったけど…
で、でもそこはほら、思想・良心の自由っていうか何ていうか…。」
まさか自分が原因だったとは夢にも思わなかった空ちゃん。
思想・良心の自由と言いつつ口に出してしまいます。
「アンタ、私の京四郎様にそんな事までさせたのね!?許せないわ、殺してやる!」
周囲からも殺気が漂います。



「・・・・・。」


そんな周囲の声は無視して空ちゃんに歩み寄る京四郎様。



「・・・・・。」


そのまま無言で目の前に立つと、
羨望の眼差しで見つめる周りの女の子を他所に、
緊張で固まる空ちゃんの肩に両手を乗せます。



「・・・フッ。」


そして優しく、それでいてどこか陰のある眼差しで見つめると、



バリッ!ビリビリッ!!


おもむろに空ちゃんの制服を破きだしたのでした。
「どういう展開じゃこりゃあ!?」「何でそこで服を脱がすんだ?訳が分からんぞ!?」
という男性視聴者の言葉が聞こえる気がするので一応説明しておくと、
こういった展開は少女漫画の王道なのです。
少年漫画では考えにくい事ですが、少女漫画では、
好きだからレイプする。レイプされたから惚れる。そして始まる恋!
という展開こそが王道なのです。なんじゃそりゃ!?
ちなみに現実でやると恋が始まる前に捕まる可能性が高いので、止めた方が良いでしょう。
そもそも、漫画のような超絶美形でないと成功の可能性すら生まれません。



「綺麗な肌だ…。」
「あ…っ。」


そしてそのまま迫る京四郎様。



「ずっと君の事だけを見ていたんだ。
その白い肌を俺の愛の証で赤く染めさせてくれ。」
「あぁ、そんな…京四郎様……好きにして下さい…。」


少し強引にも思えますが、満更でもない様子の空ちゃん。既に為されるがまま。
深夜の1時半過ぎという時間も手伝い、
二人はこのままラブシーンへと突入してゆきます。



「――って、そんな訳ないやないのぉ!
えー加減にしなはれ〜〜!!」



まさか漫画やアニメじゃあるまいし、そんな展開が起こる訳がありませんでした。



「な、何なのあの人…。」


肩を抱いて震える空ちゃん。
「信じられない…どうしてあんなこと…。」
私の初めてだったのに…衆人環視の中、いきなり青姦レイプだなんて…。
恐怖に染まった心を落ち着かせつつ、一人物思いに耽ります。



(あの人は「行こう、一緒に!」って、
王子様と同じセリフを言ったけど、空には分かっています。)



これは偶然で、たまたまで、あの人は私の王子様とは別の人。
私なんかには王子様と出会うような素敵な出会いなんて起こるわけ無いの…。
だって私は「空」だもの。ただのカラッポ…。
そう、これはそんな私に春のポカポカ陽気が見せた、絶対にあり得ないトキメキの白昼夢。
そうに…決まってるの……。
強姦未遂は空ちゃんの心に深い傷を与えたのでした。



「でも…でも、もしかして…」


しかし、視聴者がそんな不憫な空ちゃんに同情している中、
突如として自分の身体を抱き、頬を染める空ちゃん。
まるで王道少女漫画のヒロインみたいな事を言い出します。
はは、そんなまさか…



「京四郎様に触れられた所が…まだ…熱い……。」


どうやら少女漫画のファンだった様子の空ちゃん。
すごく嫌だったはずなのに…何で…何であの人の事ばかり考えちゃうの…?
その心はもう、男性視聴者の思考を置き去りにし、
既に京四郎様に捕らえられてしまっていたのでした。



チリーン…。
(――はっ!)


そんな時、真上から屋上に響き渡る涼しげな鈴の音。
もしかして、今までの恥ずかしいセリフ全部聞かれた!?
焦る空ちゃんが上を見上げると、そこには一人の少女が佇んでいました。
もし全部聴かれていたら、すごく恥ずかしい。



「・・・・・・。」


そこに居たのは一人の美少女でした。
風に靡くサラサラのシルクみたいな金の髪と、雪みたいに白い肌。
そして、宝石みたいにキラキラ輝くグリーンの瞳とメイドさんキャップ。
お人形さんみたい…。見上げた空ちゃんは、思わず彼女に魅了されてしまいます。



「――あっ!」


しかし、そんな空ちゃんの脳裏にこずえちゃんの話が蘇ります。
「マントを羽織った見慣れない女の子が校舎をウロウロしてるのを見掛けたんだって。」
ど、どど、どうしよう!この子が行方不明事件の犯人だぁ!
な、なな、何とかしてどうにかしないと、私…行方不明者になっちゃうよぉ!!
私が行方不明になったら、どこを探せば見つけられるの!?
私…かくれんぼとか苦手なのに!!



「行方不明は嫌ぁーー!!!」


勝手に色々考えて怯えだす空ちゃん。
気持ちは分かりますが、もしこの子が犯人じゃなかったらすごく失礼です。
しかし、怯えた空ちゃんが次に目を開けた瞬間そこにはもう誰居らず、
ただただ風の音が耳に残るだけでした。



「先生の美は究極だ!機動風紀だって相手じゃ無い!」
「図に乗るなダメ教師!」「ハゲ!」
「い、今私の事をハゲって言ったのは誰だ!?」
「・・・・・・。」
「お、お前達まで寄って集って私をバカにするのか!?
くそぉー!どいつもこいつもぉぉぉ!!!」



それから暫く後、突如として体育館が原因不明の爆発を起こしたため、
生徒は全員下校する事になりました。



(京四郎様は一体どこに…。)


そんな中、誰も居なくなった放課後の学園を歩いていた空ちゃんは、
偶然、普段は生徒が立ち入らない旧校舎に入っていく京四郎様を見かけます。
お昼の件もあり、彼が気になって仕方なかった空ちゃんは、
そのまま旧校舎に入って京四郎様を探すのでした。



「…んぅ?」


と、その時、近くの教室から聞こえてきた物音。
不審に思った空ちゃんが恐る恐る中を覗くと、



「・・・・・。」
「ん…ふぅ…!」


そこでは、京四郎様と先程の少女が、
ピアノに寄りかかりながら濃厚なキスをしているのでした。
あまりの激しさに、身体から光の粒子みたいな汗が飛び散っています。



「良いピアノは、ついつい激しく弾きたくなってしまう…
大丈夫か…?」


「もぅ……ばか…。」

(な、何で・・・?)


そんな二人を他所に、完全に家政婦は見ちゃたよ状態の空ちゃん。



「・・・・・・。」


その光景に耐え切れずに、その場を走り去ってしまいます。
自問自答するも涙が溢れる理由は分からず、
走る空ちゃんには、ただただ胸から湧き出してくる悲しみに耐えることと、
その悲しみを心の中の王子様に報告することぐらいしか出来ないのでした。



「ちゅ〜!」「…ん…んぁ…!?」
「そ、その後姿はまさか…?」


走り疲れた空ちゃんが階段で泣いていると、突然背後から聞こえてくる声。
驚いた空ちゃんが振り返ると、
そこにあったのはまたしても濃厚なキスシーンでした。
しかもキスをしている人物の後姿には見覚えが…。



「にゃは〜♪」「・・・・・。」


空ちゃんの思った通り、
キスをしていたのはこずえちゃん(と見知らぬ女の子)でした。
ひ、酷いよこずえちゃん!私がさっき京四郎様のキスシーンで激しく傷付いたのに、
こずえちゃんまで私にキスシーンを見せつけてくるなんて!
ヒトデナシ!ロクデナシ!しかも女の子同士でだなんて…いくら百合ブームだからって不潔だよ!!
…あれ?でも、こずえちゃんってアニメとか見るのかな…?



「おかわり見つけたにゃの!」


そんな事を考えていた空ちゃんを他所に、不吉な言葉を呟くたるろって(名前)。
突然その場で踊りだしたかと思うと、
その様子に怯えて逃げ出す空ちゃんに襲い掛かります。



「にゃは〜、観念するにゃの〜!」
「い、いやぁ〜!」


そして押し倒される空ちゃん。
肩を押さえ付けられ、脚の間に割り込まれ、そして覆い被さられます。
(ア、アタシ、このままこの子に襲われちゃうの…?)
視聴者が興奮してテレビに噛り付く中、
それを見越したたるろってがトドメの一言を放ちます。



「お、お前、何者にゃ!?」
「えっ、ここでその質問!?」


やはり、相手の名前も聞かずにアレするのはアレですから、
取り敢えず名前を聞くわけです。



「ライダーキーックッ!!!」


と、そこにタイミング良く?さっきのメイドさんが登場。
本家藤岡弘も顔負けの見事なライダーキックで、
視聴者の妄想ごとたるろってを廊下の端まで蹴り飛ばします。
普通に考えて死ぬでしょう。最低でも首の骨は折れます。



「今週のビックリドッキリメカにゃの〜!」


しかしながら、ピンピンしていたたるろって。
普段からカルシウムを沢山摂取していたのが功を奏しました。
そんなたるろっては自分専用のメカを具現化させると、
そのままメイドさんとの戦闘を開始します。



「きゃあーー!!!」


砕け散る床。落ちゆく空ちゃん。追及される責任。一体誰が校舎を破壊した!?
そんな時、屋上で聞こえた鈴の音が辺りに響くのでした。



「今こそ力を!」


鈴の音が響くと同時に踊りだすメイドさん。
呪文のような言葉を呟くと見慣れぬロボが登場し、
そのまま空ちゃんを救出するのでした。
まぁ、見慣れてるのも嫌ですが…。



「ありがとう、メイドさん。」

「私はこっちよ!」
「あ、ごめんなさい…。」



そして繰り広げられる大バトル。
派手に旧校舎を吹き飛ばして上空へと飛び出した二人(+空ちゃん)は、
残っていた生徒の目も憚らず、そのまま戦いを続けるのでした。



「喰らえにゃの〜!」
「こ、これは、あまりの闘気で攻撃が巨大に見えるという噂の…!」


たるろっての足に満ちてゆく闘気。
次の瞬間に放たれるであろう強キックへの対処法を考えるメイドさん。
大丈夫…たとえ巨大に見えたとしても、それはあくまで闘気によるもの。
実態はあの子の足と同じサイズなのだから、
あの子が狙ってきそうな場所を予測してガードすれば、確実に攻撃を防げるは




「ずはぁんっ!!」
「なに訳分かんない事言ってるにゃの?」


本当に大きかった足。思わぬ誤算にメイドさんも吹き飛ばされます。
しかし、やられっ放しでは終われないメイドさん。
仕返しとばかりに自分の手を巨大化させ、
たるろってへと攻撃し返します。
そんな二人の攻防に、元々古くなっていた旧校舎は大崩壊。
中にこずえちゃんが居るというのは一先ず置いといて、
空ちゃんもその瓦礫の波に飲み込まれてしまったのでした。



「えっ…あれ…?」


状況も分からないまま落ちてゆく空ちゃん。
分かった時には手遅れでした。
あぁ…きっとアタシ死ぬんだ…一度でいいからバケツでプリン食べてみたかったなぁ…。
しかし空ちゃんの命の灯が消えかけたその瞬間、
その目の前を一陣の風が通り過ぎたのでした。



一陣の風↑

「京四郎!」
「俺のことはいい。せつな、周囲の人は巻き込むなよ。」

「京四郎はその方が嬉しい?」

「あぁ。」

「んっ!じゃあ京四郎の言う通りにする。」


空ちゃんを助けた京四郎様は、そのまませつなさんに命令を下します。
「周囲の人は巻き込むな。」
事故を起こすなら一人で自爆しろ。ジャイアンは歌いたければ一人で歌え。
そーいう事です。



「何をグダグダ言ってるにゃの〜!!」


突然現れた京四郎様の所為で、完全に忘れられていたたるろって。
アタシを無視して話を進めるな〜!と叫んで突撃します。
しかし視聴者としては、そんな事よりも、
京四郎様はあの後から今まで何をしていたのか?
落ち行く瓦礫を飛び移って人を救助する程の馬術は何処でどのようにして身に付けたのか?
いやむしろ、その馬は一体どこから連れて来たのか、っていうか馬かそれ!?

それらの方が気になって、戦いを見守るどころじゃありません。



「てぇぇぇい!!」「にゃあ〜〜!!?」


京四郎様の所為で視聴者が戦いを見守れなかった間に、
二人を守りながらで押され気味だったせつなさんの繰り出した一撃で、
戦いは終盤を迎えます。



「せつな…行くぞ。」「分かった。」


京四郎様の馬に乗ったせつなさん。
その身体をメカに変化させ、背中に京四郎様を乗せ、
そしてそのままたるろってへと向けて突撃します。



「合体必殺攻撃!」

「二人はラブラブぅ〜!」

「・・・・・。」

「何で何も言ってくれないのよぉ〜〜!!!」

スド〜〜〜ン!!!


そしてお約束で爆発するたるろって(と、そのメカ)。
京四郎様とせつなさんの愛の力(若干片思い気味)で、
勝利をその手に掴んだのでした。



「・・・・・。」 「ん、んん…。」
(京四郎の馬鹿!せっかく徹夜で考えたのに…。)



そして戻ってきた二人。
京四郎様は、倒れている空ちゃんを見つけて優しく抱き上げます。
後ろで怒ってるせつなさんも気にはなりますが、
結局この馬はなんだったのでしょうか?謎は深まるばかりです。



「――ん、んぅっ!!?」


そしてそんな問題は知らねーよとばかりに突然のキス。
視聴者からのツッコミを有耶無耶にさせようと画策します。



(・・・・・・。)


それを背後で見つめるせつなさんの目がかなり怖いですが、
兎にも角にも、
空ちゃんのファーストキスと視聴者の疑問は、
暁の空の下に散って、消えてゆくのでした…。





続く…(かどうかは不明)。






「千歌音ちゃん、結局私達の出番は無かったね。」

「いいのよ姫子、まだ第一話なんだから…。
今の内にせいぜい主役面させといてあげましょう。」








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