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知ってる。




世界には




悲しい事が




いっぱいあるって――。





届かない気持ち、分かりあえない想い、
傷付いた約束・・・。


でも、私はこの世界が好き。

だから・・私は旅に出るよ・・・。

そして、この世界を守りたいって思うんだ。
この空を、風を、大地を・・・そして――。




07:07:24

人、エルフ、天使、そしてディザイアンと呼ばれる者達が住む世界「シルヴァラント」。
その世界は今、滅亡に瀕していた。何故ならニートが多かったからだ。特にオタなニートが多かった。
だが、一番の問題は世界の根幹、生命の源たるマナが枯渇し、消え果ようとしていたからであった。
そんな滅び行く世界の中、人々はとある希望に縋りついた。
そうだ、世界再生の神子だ!彼女なら世界を、ヤクルトを再生し、救ってくれるかもしれない!
ヤクルトが優勝すればヤクルトが安くなるはずだ。
そうなれば大量に買い込んだ乳酸菌で水銀燈祭りが出来る。是非とも水銀燈祭りがしたい!!
お願いします神子さま。どうかこの世界とヤクルトを救い、私達に盛大な銀様パーティを開かせて下さい!
こうして世界とオタク達の命運は一人の少女に託され、
その神託の下る日がやって来たのであった……。




「ごきげんよ〜う!」

「ん?」

「ごきげんようコレット〜!」

「あっ、ロイド!ごきげんよ〜う!」

神託が降る日の朝、
イセリアの街近くの丘でコレットちゃんが寝転がって景色を眺めていると、
そこに親友のロイドが登場し、やっと見つけたぜ〜!
――なんて言いながら駆け寄ってくるのであった。


(・・・へへっ!)

「コレットぉ〜!」

「ロイドぉ〜!」

「コレットぉ〜〜!!」

(・・・・・?)

「コレットぉ〜〜!!」

「私難聴じゃないよロイドぉー!」

「うわっととと・・・!!」

ドンッ!「きゃっ!?」

ドサッ・・・!

コレットちゃんへの誕生日プレゼントとして作ったペンダントを握り締め、
丘の下から一気に駆け上がって来たロイドだったが、途中で、
これを見たらコレットのヤツ喜ぶだろうなぁ〜!そんでそのまま俺が首に掛けてあげて、
フッ・・・好きだぜ、コレット。私も・・・ロイドのこと大好きだよ!
あぁ、俺達もう結婚するしかないな!うん、ロイドとなら私・・・。
大切にするぜコレット。うん、幸せにしてねロイド。チュ〜・・・。
なぁんてなぁ〜!なぁんてなぁ〜!!
――なんて妄想に浸っていたため、コレットちゃんの予想外のボケに躓き、
まるで安倍総理の支持率の如く一気に倒れ込んでしまうのであった。



しかし、そんな転倒はさり気ない恋愛フラグの証。
モテない男性からしたら出会い頭に殺しちゃった☆並の大イベントです。(理解不能という意味です。)
もっと判りやすく言うと、負けるかも…。
――と心配していた自民党にやってきた地震イベントみたいな感じです。
必死で好感度稼ぎまくってますもんね。発生早々首相が直接乗り込む意味は分かりませんが…。
しかし、何にせよ負のイメージには違いないため、
押し倒されたコレットちゃんと上の花のイメージ画像が重なってしまい、
今にも花が根元から落ちないかどうか、視聴者の胸に不安と期待が募るのであった。


「っかぁ〜!痛ってぇ〜!!」

「大丈夫ロイド?」

「あっはは!心配かけて悪ぃなコレットwww」
「ふふ・・うふふふwww」

しかし、特にそんな事が起こることも無く、
取り敢えず、後頭部を殴打させられたのに笑って済ませたコレットちゃんが、
粘着質な性格でないかどうかの方が気になるのであった。


「これ・・ロイドが作ったの?」

ロイドからのプレゼントに喜ぶコレットちゃん。
しかしそんなコレットちゃんを他所に置き、ロイドは、


「あ、あぁ・・・まぁな。」

――と、少し自信無さ気な顔をして、
親父には半人前以下…いや、1/4人前だぁぁ!って言われちまったけどな。
――と、ちょっと失敗談を交えながら、
まじまじとペンダントを見つめるコレットちゃんの反応を窺うのであった。
これは弱気な所を見せてコレットちゃんに慰めて貰おうという作戦です。
ロイドがこないだ拾った「完全必勝!恋愛攻略マニュアル」という、
若干涙で滲んだような跡の付いた本に書いてありました。

しかし、そんなロイドの思惑とは裏腹な言葉がコレットちゃんから返ってきます。


「判るよ。ロイドはハーフよりクォーターの方が、
響きがカッコイイって言いたいんだよね。
あ、でもクォーターの方が、
実際にも格好良い人が生まれやすいんだってね。」


「あっ、そ、そうなの・・・?」

その予想外の言葉に驚愕するロイド。
し、知らなかった…まさか褒め言葉だったなんて……。
じゃあ親父の奴、何だかんだで俺のこときちんと褒めてくれてたんだ。
昨日は勘違いしてアレな態度とっちゃったし…帰ったらきちんと謝っておくか。
なんて事を一人思い、


(すまねぇ親父。俺あんたの息子で良かったよ。)

――なんて、更なる勘違いをするのであった


「はい、じゃあジーニアス。
教科書の222ページからお願い。」
「はい!」


「・・・一人百面相をする祐巳の目の前で、
柏木さんは祥子さまの手を取り、肩を抱き、
そしてガラス細工のように繊細な祥子さまの唇に、
キスをしようと迫るのであった。」


「しかし、祐巳が心の中で悲鳴をあげた瞬間、
辺りの銀杏並木に乾いた音が木霊した。
「調子に乗るの、おやめになったら!」
祥子さまが柏木さんの頬を力一杯ひっぱたいたのだ。」

「はい。」

その日の午後、神託を受けるため学校公認で休めたコレットちゃんを、
心底羨ましそうな目で見送ったロイドが登校すると、
そこではリフィル先生によるいつもの授業が行われているのであった。


「このように、祥子さまは愚かな柏木に制裁を加えた訳です。
マリみては最高ですね。まさに祥子さまLOVE!!」


若干引き気味の生徒たちを他所に熱く語るリフィル先生。
いいですか?マリみてには紅薔薇・黄薔薇・白薔薇の三種類がありますが、
それらで区別するのは邪道なのです。
マリみてと言えば祥子さま。祥子さま=マリみて。
祥子さまこそが正義であり、絶対普遍の真理…そう、絶対運命黙示録なのです!
つまりこの世は祥子さまによって創造された、言うなれば祥子さまワールドなわけです。
だからこそ私達は毎日決まった時間にリリアン女学院の方角に向かってお祈りをし、
毎週末にはミサに行ってマリア様にお祈りを捧げるわけです。祥子さまLOVE!…と。


「祥子さまって誰だっけ・・・?」

(あちゃ〜!ロイドご愁傷さまぁ〜・・・。)

しかし、コレットちゃんの事が気になってボーッとしていたロイドはうっかり口を滑らしてしまい、


「・・・ロイド?」「・・・・・・。」

――カッ!

シュルルル〜・・・

パシッ!

「貴方には徹底した教育が必要なようね!」

バッ!

ブォン!「取り敢えず、」

「祥子さまに!」

「謝れぇぇぇぇぇぇっっ!!!」

それを聞きとめたリフィル先生にセイクリッドシャインを叩き込まれるのであった…。


ズビシッ!

ズダーンッ!!

「お前はもう、惚れている(祥子さまに)。」

「はぁ〜・・・。」

――ちょうどその頃、
(ロイドが殺虫剤を掛けられた虫のようにピクピクと痙攣していた頃。という意味。)


「もう間もなくですな。」
「えぇ、もう間もなく虎の穴から同人誌が届くはず。」
「じゃなくて、神子の神託が降るはず。だろ!」
(・・・虎?)

そんな事は露ほどにも知らないコレットちゃんは、村近くにある聖堂にて、
村の祭司様たちと一緒に神託が降るのを待っているのであった。


(ロイド・・・。)

幼い頃から神子になる者として育てられてきたコレットちゃん。
神託の開始を目の前にしても一人気丈に振る舞ってはいたのですが、
まだ16歳というあどけない少女なこともあり、ロイド…私、頑張るからね…。
――っと、その意識は知らず知らずの内にロイドからのプレゼントに伸びるのであった。


パァァァァッ!

「――っ!!?」
「おおっ!こ、これは一体!?」
「何が起こっているというのだ!?」
「だから神子の神託だろっ!?」

「はぁぁぁぁ・・・・・・。」

――っと、突如として神々しい光に包まれる託宣の間。
何事だ!っというか何時になったら神託は降るのだ!?
えぇい、腹が減ったぞ!パンパン!誰かカップヌードル(カレー)を持て〜い!

っと、祭司達が騒いで駄々をこね出す横で、コレットちゃんが光の先を見上げると、


「我が名はレミエル。」

何も無かったその場所に突如として天使が出現し、
誰に聞かれた訳でもないのに勝手に自己紹介を始めるのであった。


「天使・・様・・・?」

その様子に呆気に取られるコレットちゃんだったが、
そんなコレットちゃんの様子を見ると、
レミエルさんは厳しく、だがどことなく優しい口調で語りかけてくるのであった。


「そんなに緊張する必要はない。
汝が世界再生の旅に出る救世の神子ならば、
その証として、まずは私に合言葉を示して御覧なさい。」


「えっ、合言葉?」

しかしその言葉に戸惑うコレットちゃん。
えっ?合言葉!?合言葉って何?え、私そんなの全く聞いてないよ??
――と、予想外の事に内心焦りまくるものの、
司祭達はカップラーメンを食べに何処かに行ってしまったため、
どう答えていいか分からず、ただ困惑するばかりなのだった。


「卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでゆく。
汝等が雛だ、卵は世界だ!
世界の殻を破らねば、汝等も生まれずに死んでゆく。
世界の殻を破壊せよ。」


「「「世界を革命するためにっ!!」」」

――と思ったら、何時の間にか帰って来ていた司祭達。
おまけに、勝手に合言葉に答えたりしてノリノリです。
実は、合言葉を言うのは事前に知っていたのですが、
自分達が言いたかったが為に、コレットちゃんにはわざと黙っていたのでした。


「むふぅ〜ん!」

でも何故か満足げなレミエルさん。
実は、レミエルさんも取り敢えず言ってみたかっただけなので、
別に誰が答えても特に関係無いのであった。
そんなレミエルさんは答えに満足すると、
コレットちゃんの首に再生の神子の証である首輪を取り付け、
さらに天使が持つ奇跡の力で神子が目指すべき救いの塔を出現させると、


「おじゃぱめ〜ん!」

――と言い残し、満面の笑顔を湛えたまま天空に消え行くのであった…。


(なんとしても・・・!)

しかし、レミエルさんが帰った後でコレットちゃんが決意も新たに握り拳を作っていると、


ガシャーンッ!!!

「・・・えっ!?」

ズダダダンッ!!

突如として風切り音とともに数多の矢が飛来し、
その全てがコレットちゃんを目掛けて降り注いでくるのであった。


ガンッ!ガギィンッ!

ザグッ!「ぐあぁぁぁぁああっ!!」

そして乗り込んで来るディザイアン。
コレットちゃん自身は司祭達がその身を挺して矢を防いでくれたお陰で無事だったのですが、
護衛に就いていた兵士達は突然の来襲に混乱し、瞬く間に殺られてしまうのであった。



そして追い詰められたコレットちゃん。
何で私が狙われるの?ディザイアン達は一体何が目的なの!?
もしかしてこないだ私が勝手にプリンを食べちゃったせい?
ううん、でもアレは村にあったヤツだし、ディザイアンは関係ないよね…?

――と、何故自分が狙われたのか、その訳も分からないままに追い詰められたことで、
若干混乱したことを考えてしまうのであった。


ババッ!

しかし、世界再生の旅はシルヴァラントに住む人達の最後の希望。
このまま世界が滅んじゃったら人が住めなくなってしまう。そしたらロイドも……。
そう思ったコレットちゃんは、シルヴァラントに住む人達の為に、
そしてなにより自分の大好きな人の為に、あとプリンの為に、私…こんな所で死ねない!
――っと、勇気を振り絞って背中に隠していたチャクラムを構え、
不敵な笑みを浮かべるディザイアンの前に飛び出すのであった。



しかし所詮は戦いに不慣れな少女の強がり。
護衛を瞬殺出来るほどの錬度を持っている上に数でも圧倒しているため、
そんなコレットちゃんの健気な想いなど嘲笑うかのように、プリンなどやらんと言うかのように、
ディザイアン達はコレットちゃんに詰め寄ってくるのであった。


「コレットぉ!」

しかしその時、救いの塔の出現を見て学校からやって来たロイド達が登場し、


ズシャァァァ・・・

チャキ、カキンッ!

「ロイドぉ!」「無事かコレット!?」
「うん!」


「テメェ等・・・揃いも揃ってコレットを狙いやがって、
トサカにきたぜっ!」


何とかコレットちゃんの窮地を救うことには成功するのであった。
とはいえ、4人いるディザイアンに対してコチラでまともに戦えるのはロイドのみであり、
以前状況は打開されず、一時的に時間を稼げた程度でしかないのであった。
そのことに…くっ、このままじゃ絶体絶命のピンチってやつか!?
――と、そんな事を視聴者が思った次の瞬間、


「遅くなってすまない。
自作のケーキを作っていたら、
予想外に大作になってしまってな・・・。」

「おぉ・・来てくれたか・・・クラトス殿・・・!
して、そのケーキは・・・?」



「そこでコケてダメにした。」

「ぐふぅ・・・。」ガクッ・・・!

クラトスという名の、司祭に雇われた傭兵が現れるのであった。
しかし皆はその事を知らなかったため、揃って「アンタ誰?」見たいな顔をしています。


「なっ、クラトスだと!?」

そんな中、ただ一人ロイドだけが驚愕の表情を浮かべ、驚きを露にするのであった。
そんなロイドの只ならぬ様子に不安を覚えたコレットちゃんが、
ねぇロイド、あの人のこと何か知ってるの?
――っと、クラトスさんの正体について尋ねるものの、


「いや、まったく。」

「あ、そうなんだ・・・。」

ロイドはただ大袈裟に驚いてみただけであって、
特にコレと言って何も知らないのであった…。
しかしその間にもクラトスさんはディザイアン達の間に割って入って剣を抜くと、


コツ・・コツ・・コツ・・。

ジャキンッ!

「私は今、ケーキの件でイラついている。」

「・・・さっさと来い。」

――っと言い放ち、


『『うぉぉぉぉぉっ!!』』

ズババババンッ!!!

閃光が走るほどの凄まじい斬撃を繰り出して、ディザイアン達を瞬殺してしまうのであった。
ちなみに、「残像ならまだしも、どんなに速く斬ったとしても閃光は走らねぇよ!」
とか言ってはいけません。閃光が走った。敵が倒れた。クラトスさんが格好良く見えた!
それでいいのです。腐女子を敵に回してはいけないのです。



ちなみに、何とか起き上がってコレットちゃんに襲いかかろうとした敵の一人は、
エクスフィアを発動させたロイドによって撃退されました。
エクスフィアというのは、トップをねらえ2!のトップレス能力みたいなものです。
各人の得意とする能力を自動で引き上げ、各人固有の特化した能力を付与してくれるのです。
是非とも現実世界で欲しいところですね。


「・・・・・・。」

ドカッ!「あふぅんっ!?」

「へ、へへっ・・・
この俺をここまで追い詰めるとはやるな。」


――その日の夜、
ロイドの家の敷地内に不法侵入したクラトスさんが誰かのお墓の前で黙祷を捧げている頃、
ロイドは家で待ち受けていたモンスターに襲われ、絶体絶命のピンチに陥っていたのであった。


「お前ぇの母ちゃんはエクスフィアの所為で死んだんだぞ!」

――と思ったらロイドの育ての親のダイクさんでした。
ちなみに職業は大工ではなく鍛冶屋です。
そんなダイクさんは虐待に反対する市民団体のことなど知りもしないような勢いでロイドを殴り飛ばすと、
確かにお前のディザイアンに対する憎しみは分かってる。
何せお前ぇの母ちゃんはディザイアンに殺されたんだしな。
だが、その原因となったのがお前の左手にも埋め込まれているエクスフィアだと知っていながら、
何故その力を使いやがったんだ!お前もディザイアンに狙われて殺されてぇのか、馬鹿野郎っ!!
――と、怒鳴り散らすのであった。
しかし、そんなダイクさんの言い分にロイドが反撃します。


「殺された?・・殺されただって!?」
「・・・・?」


「それはクリリンのことかぁぁぁっ!!!」


「なに訳分かんねぇこと言ってやがる!!?」
「あーっ、嘘々、嘘です!何でもありませんでしたぁ!」

しかし、仕方ないじゃないか。コレットが困ってたんだから…仕方ないじゃないか!
僕だって風俗に行きたいんだよ!仕方ないじゃないかっ!!
――と、えなり君のモノマネをしながら言い訳してくるロイドに対し、
えなり君を知らなかったダイクさんはまたしてもふざけているものだと勘違い。
再度鉄拳で制裁を加えてきたため、それに耐えかねたロイドは家を飛び出すのであった。
知ってたら余計に怒られたかもしれませんね。


「・・・・・。」

「エクスフィア・・か・・・。」

その後、神託の前にコレットちゃんと会った丘の上で寝転がり、
ロイドが、幼き日にディザイアンに襲われて母を亡くした時のこと、
そしてその後ダイクさんに助けられて育てて貰ったこと等を思い出していると、


「わっ!」

――と言って、突然コレットちゃんが現れるのであった。



「ぬわぁぁぁああぁぁぁぁああっ!!?」

「ひっ!?」

しかし、考え事をしていたロイドはその突然の登場にビックリ仰天。
コレットちゃんとしては、夜の丘だしちょっと脅かしたらロイドでもビックリするかな?
私はもう明日には再生の旅に出ちゃうし、最後の思い出にならちょっとぐらいいいよね?
――と思って軽い気持ちでやったのですが、
思いの外(というか叫ぶほど)驚かれてしまったため、逆に驚かされてしまうのであった…。


「なぁコレット・・・
どうしてウチの授業はマリみてしかやらないんだろうな。」

「えっ?う〜ん・・どうしてだろうねぇ?」

そして誰もいない夜の丘でそっと語り合う二人。
今までは小さい頃からいつも一緒に育ってきたけど、それも今日のこの夜まで。
明日からはコレットの世界再生の旅が始まって、
コレットも、それに付き添うリフィル先生も、この村から居なくなっちまう。
そうなったら…もうこんな風に会うことも、皆で楽しく話すことも、遊ぶこともできねぇ。
そしたら俺は親父に怒られた時、一体誰に慰めて貰えばいいんだ?ジーニアスか!?
けどもしそんな事になったら、今時の風潮に流された製作側によって、
万が一の可能性でそういう方向に持ってかれちまうかもしれねぇ。俺は受けか?それとも攻めか?
いや、っていうかそれ以前にそれは嫌だ!激しく嫌だ!
確かに俺は二刀流だけど、それは両刀って意味じゃない。俺はノーマルだっ!
――っと、二人で話していたのに何時の間にか一人で頭を抱えて転げ回りだすロイド。


「なぁコレット、やっぱ俺も一緒に行っちゃダメか!?」

そしてその万が一の場面を想像してしまって頭がショートしかけたその時、
ロイドはコレットちゃんの旅への同行を許して欲しいと言い出すのであった。


「俺、ディザイアンも許せないし、
お前のことも心配なんだよ!」


尤もらしいことを言い出すロイド。
しかしそんなロイドの熱い想いに胸を打たれたのか、
コレットちゃんは少しの間迷うような表情を見せると、
じゃあ明日、朝の10時に村の入り口に集合だから…。
――っと言い残し、その場を後にするのであった…。


(なんでだよコレット・・・。)

しかし、次の朝ロイドが約束の時間に村の入り口に行くと其処にコレットちゃん達の姿は無く、
同じ様に姉のリフィル先生に言われてやって来たジーニアスが立っているだけなのだった…。



そして引き篭ったロイド。コレットちゃんの、
嘘を付いてごめんなさい。でも分かって下さい。
もしこの旅でロイドに万が一の事があったら、私が旅をする意味も無くなってしまいます。
どんなに離れていても心は一つ、いつもロイドのことを想っています。
そうすればいつでも一緒だから。…ね?
もし私が世界を救えたその時は…ロイドは希望の力と未来の光に満ち溢れたこの世界で、
皆と一緒に幸せに暮らしていって下さい。イエス、プリキュア。
――と書かれた置き手紙により事情は飲み込めたものの、気持ちの整理はつかず、
そのままずっと家に籠もって、横で鍛冶仕事をするダイクさんに「うるせぇな。うるせぇな。」
――と、ぶつぶつ呟き続けるのであった…。
タチが悪いですね。


バタンッ!!

「――っ!!?」

ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ・・・・。

「俺と同じで引き篭もってるオタが何しに来た!?」

「僕はオタじゃない!
確かに引き篭もってたけどオタじゃないっ!!」


「っていうかジーニアスお前、
凄いハァハァぶりだな!100回ぐらいのハァハァぶりだな!」


――っとその時、突然家のドアが開け放たれ、
雨でずぶ濡れになったジーニアスが必死の形相で転がり込んでくるのであった。


ゴォォォォ・・・!!パチパチ・・・。

その頃、イセリアの村ではエクスフィアを狙ったディザイアンによって火が放たれ、
辺り一面、村は火の海となっていた。
そんな中、村を焼かせたディザイアン達の幹部フォシテスさんは、
焼け出された村人達を一箇所に集めるととある質問をします。



「貴様ら家畜人ヤプー共に告げる。
左手に変な物を付けた奴を知っているか!?」


「・・・・・えっ?」

その質問に戸惑うイセリアの村長。その視線がフォシテスさんの左手に篤く注がれ、
えっ、何?何なのこの人?え、自分のこと言ってんの?
えぇっ!?これは一体どーゆうことなの?言っていいの!?
言うべきか言わざるべきか…どうすんの?どうすんの?どうすんの俺!?どうすんのよぉぉぉ!!?
――っと、自分の手札を見比べながら凄まじい勢いで狼狽しだすのであった。


「あ〜・・えっと、知ってると言えば知ってるし、
知らないと言えばそういう事にも出来るというか・・・。」


しかし、流石に口には出せなかった村長。
大人としては、敢えて恥ずかしい事を指摘してあげることでその人物を全うな道に、
例えばいい歳コイて変な棒っきれを左手に付けてハシャイでる人に、
社会で生活するのに必要な一般常識や倫理観を植え付けてあげたりするのも重要な仕事なのですが、
知らぬが仏と言う言葉もある通り、時には知らないこと、気付かないことが本人の幸せに繋がる事もあるため、
今回は苦渋の決断で知らないことに、見なかったことにするのであった。


「ひぃ!?」

しかし、村長が最初にフォシテスさんの左腕を見てしまったためか、
そんな村長の心の中を見透かしたフォシテスさんは激昂し、
左手の変な棒を村人達に突きつけると、「死ね…。」っと一言呟くのであった。
――っと、その時!


「はぁぁ・・・喰らえっ!」

「アクアエッジィィィ!」

ドバァンッ!ドバァンッ!

「だりゃぁぁ!!」ズバァンッ!

そんな村長達の窮地にギリギリで間に合ったロイド達が登場し、


「トォォォルハンマァァァァッ!!」

「アイアン・・・」

「クロォォォォォォッ!!」

「獣王痛恨撃ぃぃぃぃぃっ!!!」

ばひゅ〜〜〜ん・・・・・。
「・・・怖っ!」・・・怖っ!

ついでにやって来たダイクさんのあまりの強さに恐れをなすのであった。
完全にオイシイ場面を奪われています。
しかしこのまま主役の座を奪われっぱなしでは終われない二人。
おもむろに、お、俺達だってこのまま食われっぱなしじゃいられねぇ!獣王痛恨撃だぜっ!(気に入った)
――と叫ぶと、ロイドとジーニアスの二人はこの場を一先ずダイクさんに預け、
自分達はフォシテスさんのいる所へと駆けつけるのであった。


「ゆくぞぉ!」

そして始まる戦い。決して僕がその過程を書くのがメンドクなったとかそーいうことではなく(重要)
二人の意思が心の中で通じ合ったという闘う者にのみ分かるニュータイプ的な理由により、
人質を取っていて圧倒的に有利な立場にいるはずのフォシテスさんは、
カッコイイ中に何処となく違和感を交えたようなポーズでブーンをすると、
わざわざロイドと一騎打ちで決着を付けることにするのであった。


「はぁ!」

「ぬぅん!」「ぐぅぅ・・・っ!」

「ぐぁ!?」

ドンッ!!グギュルッ!!

「ぐ・・・あが・・・・っっ!!??」

ドーーーンッ!!!

「・・・・・・。」

しかし、走り出したポーズのアレ具合は兎も角、
実際にはかなり圧倒的だったフォシテスさんの力。
奮闘するロイドを全く寄せ付けず、いとも容易く打ちのめしてしまうのであった…。


「ふっはははは!その程度なのか?
もういいからさっさとエクスフィアの力を見せてみろ!」


しかしロイドの本当の力が、エクスフィアの力がまだ現れていない事に気付いていたフォシテスさん。
ロイドを小馬鹿にしながら近づくと、エクスフィアの力を試すために、
早くしないと貴様の仲間達も皆殺しにするぞ?
――っと、脅して発破を掛けてくるのであった。


カァァァァァッ!

すると、最後の言葉がロイドの母親を殺された時の思い出と重なり、
その高ぶった感情によりエクスフィアの力が発動。


ガァンッ!!ギリギリ・・・!

前以上の力を取り戻したロイドは高く跳躍するとそのままフォシテスさんに襲い掛かり、


「魔神剣っ!」

バァァァンッ!!

再び跳躍して距離を取ると、今度は必殺の魔神剣を放つのであった。


ドバァンッ!

しかし、それでもフォシテスさんには歯が立たなかったロイド。
魔神剣もあっさりいなされてしまうと、
その様子に驚いている隙にまたしても殴り飛ばされてしまうのであった。
この状況を逆転させるためには一刻も早いダイクさんの到着が望まれます。
しかしそんな願いも空しく、


「ふん、もういい。
さっさと殺してエクスフィアを回収してやろう。」


――と言って、フォシテスさんはロイドに対し死の宣告をすると、
左手の変な棒を突きつけ、カウントダウンを開始するのであった。


「波動砲発射準備開始。
波動砲発射10秒前。」


カパッ!

「ひ、開いた??」

なんか開きだした棒。フォシテスさんのカウントダウンが続きます。


「波動砲、エネルギー充填30%。
対ショック・対閃光防御、展開。」


「波動砲、エネルギー充填120%。
発射準備完了。」


「これで終わりだなヤプー!
波動砲発射ぁぁぁぁっ!!!」


そして波動砲に十分なエネルギーが貯まり、カウントダウンが終わった時、
フォシテスさんの掛け声とともに変な棒から波動砲が発射され、
街を吹き飛ばせるほどの砲撃がロイド目掛けて一直線に襲い来るのであった。


(ちくしょう!俺はこんな所で終わっちまうのか!?)

(コレットの世界再生の旅に付いて行くことも出来ず、)

(俺の所為で村に攻め込まれておきながら、
その村の皆を守ることも出来ず、)


(その挙句に、結局俺も母さんの仇である、
ディザイアンの手に掛かって死んじまうのか!?)


(・・・嫌だ!そんなのは嫌だっ!)

(俺はまだこんな所では死ねないし、)

(死にたくもない!)

キラーン☆

パキュイーン・・・!

しかし、ロイドが自分の死を確信し、且つ生への強い執着を見せたその時、
突如としてロイドの中で何かが弾け、
フリーザ様にクリリンを殺された悟空がスーパーサイヤ人に目覚めた時の如く、
ハクオロさんがウィツァルネミテアだったことを思い出して覚醒して戦った時の如く、
龍の力に目覚めた孫策さんが1800年前の運命を跳ね返して于吉さんを返り討ちにした時の如く、
覚醒したロイドの内に眠る潜在的な力は留まることなく燃え上がり、
激しい奔流となって溢れ出すのであった。



ドォォォォォォォンッ!!!!!

でもやられた…。
世の中、気合だけではどうにもならない事もあるのです。


「オラ・・死んじまったのか?」

そして精神世界を漂い出すロイド。肉の楔から解き放たれた魂が虚空を彷徨い、
遠い日に分かれたはずの母(っぽい人)と再会するのであった。
そして告げられる言葉。貴方の大事な人を…守りなさい…。
その言葉を聞いたロイドは真っ先にコレットちゃんの顔を思い浮かべ、
分かったよ母さん、俺やっぱコレットを守るよ。だから今からでも世界再生の旅に付いて行く!
――っと、言うのであった。そしてロイドが、
そういやさっき「カミーユカミーユ」言って誰かを探してる人に会ったんだけど、母さん何か知ってる?
と訊いた時、不意に世界が歪んで目の前が回りだし、


「あっ、・・・あれ?」

ロイドの意識は現実世界に引き戻されるのであった。
そして、ロイドが気付くとまるでそれを待っていたかのようにエクスフィアが激しく光り輝き、
そこから一際眩しい光が天を突くほどの勢いで迸るのでした。


ズドォォォォンッ!!!

「うぉぉぉぉおおぉぉぉおおぉぉっ!!?」

そして落ち行く光り。
波動砲の爆発の規模と村の被害の状況のあまりの食い違いぶりに、
な、何故だ!?何故アレほどの爆発力がありながらこの程度の被害しか出ていないのだ!?
えぇい、この変な棒の調整をした奴は誰だ!一体何処のエコ団体だ!?出て来ぉぉぉい!!
――っと憤り、そのあまりにも環境に配慮し過ぎた作りの兵器に驚いたフォシテスさんが叫んでいると、
何かちょっと危ない放射能とかを含んでいそうなエクスフィアの光が降り注ぎ、
あれほどロイドを圧倒していたフォシテスさんはそのままアッサリとやられてしまうのであった…。


「はぁ・・・はぁ・・・い、行くのか?」
「あぁ・・・すまねぇ親父・・・。」

次の日の朝、ロイドが母親の墓前に出立の報告をして家を出ようとしていると、
出てこないと挨拶をしてもらえなさそうだったダイクさんがちょっと慌てた様子でやって来るのであった。
そんなダイクさんは、母さんの仇のディザイアンを倒したい。コレットのことも心配だから守りたい。
そう呟いたロイドの意志が固いことを確認すると、出掛ける前の餞別として、
ロイドが横でうるさいうるさい言ってた時に自分が打った二本の片手剣を差し出し、
こう告げるのであった。


「いいか、ロイド。そのエクスフィアの力は危険だ!」

こいつぁ俺の勘だが…それ多分爆発するな、その内。
しかも凄い勢いだな。多分半径1万キロは吹っ飛ぶ。間違いないな。――と。
そしてそのダイクさんの言葉に大ショックを受けるロイド。
へへっ、折角これからだったってのによぉ…なんてこった、なぁんてこったぁ!
――っと、足元に蹲って泣きながら地面を叩きだすのであった。
しかし、そんなロイドを見たダイクさんは、
そっと慰めるかのようにとある事をロイドに諭すのであった。


「だがな、ロイド。
どんな力でも使い方次第、使う奴次第なんだ。」


だからこいつぁ俺の勘なんだが…もしかしたらそれ、爆発しないかもしれねぇ。
そのエクスフィアはお前の身体に埋め込まれ、最早お前の身体の一部みたいになっている。
なら、お前が正しいと思えることにのみその力を使えたなら、
それはきっと爆発しないはずだ。何かそんな設定な気がする。だから…、


「頑張れよロイド!コレットちゃんによろしくな!」

――と。


・・・ぐっ!

「親父・・・俺・・・俺・・・っ!」

その言葉に感動して涙ぐむロイド。
俺…いったい親父の言葉の何処に感動して泣いてるんだろう…?
っていうかそもそも、何で親父は特に平気そうなことを言ってわざわざ俺を不安にさせたんだろう?

などと思い、不思議に思って自問自答を繰り返してみたりはするものの、
いつもケンカばかりしていたダイクさんが自分の決意を後押しして応援してくれたこと、
自分のことを信じてくれたこと、
たとえ血が繋がっていなくてもお前は俺の息子だ!全てが終わったらまた帰って来いよ。
と、言ってくれたこと、そして、こないだ学校に置いといたプリンが勝手に誰かに食べられていたこと…。
それらに対する何とも言えない気持ちが後から後から湧き出してきてしまい、
言葉に詰まって何も言えなくなってしまうのであった。
ちくしょう…俺のプリン食ったヤツ誰だよ……ぐすっ。


「ほらほらロイド、
早くしないと僕だけで行っちゃうよw」


しかし、そんな感じでロイドが涙ぐんでいるとその様子を見たジーニアスがその場に登場し、
さっ、ロイド!もう一日分は遅れてるんだから急がないと!
ほらほら、そんなのんびりやってたら追いつけないよ?
僕だって早く姉さんやコレットに会いたいんだからさ。
――と言ってロイドに声を掛けるのであった。


「あぁ、そうだな!」
バタンッ!「むぐぅ〜!?」

そしてそれを聞いたロイドは涙を拭き、いつもの元気を取り戻し、
先を行くコレットちゃん達の後を追ってイセリアの村を旅立つのであった……。



第2話に続く。







<おまけ>




(むっ・・・イカンな・・・。)

「・・・?」

「どうしたんですか?クラトスさん。」

「・・・いや、何でもない。それより先を急ごう。」
「あ、はい・・・?」

(・・・・・・。)

(らき☆すたの録画を忘れたな・・・。)

「そういえば、クラトスはマリみてとか読んだことあるのかしら?」
「……いや、そういう書物を読んだことは無い。」
「あらっ!それじゃ折角だし道中で貸してあげるわねぇ〜w」
「・・・・・・・・・・。」


世界再生の旅は続く……。


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